Friday, August 28, 2020

Honda e(ホンダ e)日本発売〜国内販売計画台数は年間1000台だけ - EVsmartブログ

※冒頭写真は東京モーターショー2019発表時の車両。

ホンダのEV開発には熱意を感じていた

2020年10月30日の国内発売が正式に発表されました。

ホンダは、1990年代初頭から、トヨタや日産と共に電気自動車(EV)開発に熱心に関わってきた自動車メーカーだ。また、日本EVクラブ(編集部注:御堀氏は副代表)発足前の1994年に『電友一号』という電気フォーミュラカーで米国アリゾナ州・フェニックスで開かれたEVレースに参戦した際、ホンダ技術研究所の有志が鉛酸バッテリーの充電管理に協力してくれてもいた。

日本EVクラブが製作した『電友一号』。

米国カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle)規制へ向け、トヨタ/日産/ホンダが実証実験車を開発した際にも、トヨタがRAV4、日産がルネッサという市販SUV(スポーツ多目的車)を改造して仕立てたのに対し、ホンダはEVプラスと名付けた専用車を開発してきた。各社それぞれに持ち味のあるEVだったが、ホンダEVプラスはとくに発進からの加速に鋭さがあり、壮快な運転を楽しめるEVという独自性を感じさせた。

そのホンダEVプラスは、各社が法人向けリースによる実証実験を行ったとき、唯一個人へのリースも米国で行い、個人にとってEVがどのような印象を与えたり、新しい生活感を見つけさせたりするかの検証も行っていた。その一軒に取材をさせてもらった経験は、私にとっても忘れられないものとなっている。

EV導入に向けたホンダならではの熱意ある取り組みに触れてきただけに、いつホンダが本格的にEVを市販するのか、期待に胸を膨らませ20年以上待ったのである。

その間に、フィットEVのリースなども行われた。そこでは、東芝のSCiBという、容量より充放電回数の多さに重点を置いた特性をもつリチウムイオンバッテリーを用い、加減速や急速充電などを視野に入れた試行錯誤が行われたことを想像させた。あいにく、フィットEVに試乗する機会は得られなかったが、ホンダEVプラスで体感した壮快な走りというあたりは継承されていたのではないかと思いながら、本腰を入れた市販EVの発表を待ったのである。

Honda e 事前説明会で感じた驚きとは……

そしていよいよ、Honda e(以下、ホンダe)の登場となった。ホンダならではの魅力を湛えたEVだと思う。

ところが驚いたことに、国内販売計画は、年間で1000台という。「1000」という数字を見たとき、最初は月に1000台だと勘違いし、それなりの意欲を感じたが、まったく逆であった。年間に1000台という販売計画は、燃料電池車(FCV)のクラリティ・フューエルセルの200台に似た控えめな数字だ。なぜ、それほど少なめな数字になったのだろう。

事前発表会で配布された資料。

聞くところによると「販売の中心が欧州である」という。理由は、2021年から強化される二酸化炭素(CO2)排出量規制のCAFE(Corporate Average fuel Efficiency=企業平均燃費)を達成するためだ。このため、欧州販売用のリチウムイオンバッテリー確保が優先され、日本で販売できる台数が制限されたのだという。

すでに数年前から、世界ではEVを含む電動化へ向けリチウムイオンバッテリー確保の競争がはじまっている。背景にあるのは、米国のZEV規制、中国のNEV(New Energy Vehicle)規制、そして欧州のCO2排出量規制の強化の進行であり、リチウムイオンバッテリーの調達戦略は、車両開発とともに不可欠であったはずだ。

ホンダeのリチウムイオンバッテリーは、これまでのホンダのEV開発の流れを踏襲するかたちで、容量型ではなく出力型の特別仕様としてパナソニックと共同開発をしたものであるとの説明であった。したがって、ほかの自動車メーカーへ供給されるEV用バッテリーとは特性が異なることも、生産数制約の一因かもしれない。

営業の側面では「国内におけるEVの販売台数の推移が0.5%前後から伸び悩んでいるため、慎重な台数にした」とホンダの担当者は語る。

しかし、過去の市販EV販売台数実績を振り返って(EVsmartブログ関連記事にリンク)も、JC08モードで一充電走行距離が200kmしか走らなかった日産の初代リーフでさえ、2010年12月発売の翌11年には1万台以上を売っている。なおかつ当時の国内の急速充電器の整備はまだ十分ではなく、日産が自ら販売店に急速充電器設置を進め、それを消費者への安心材料としながらの販売であった。

現行の2代目リーフが発売されたあと、初代リーフから乗り続ける所有者数人に話を聞く機会があった。そこで彼らが語ったのは「一充電走行距離はほとんど気にしなかった。試乗してみたらとてもいいクルマだったので買った」ということであった。それだけ初代リーフの商品性は興味深く、魅力的であったことになる。

そうした消費者が、発売早々1万人以上はいた。なかには、EVに惚れ込んで、初代リーフはもちろん、マイナーチェンジで走行距離が伸びた初代の後期、そして現行のリーフも買って3台所有しているという人さえいる。EVは、一度体験してしまうと、離れがたくなるところがある。

そのうえで、初代リーフで距離を気にしなかった、あるいは距離に制約はあってものちに急速充電器の整備が進み、充電しながら旅をする新たな喜びを体験した人たちにとって、ホンダeの約280km(WLTC)という走行距離は十分な性能であり、リーフの次はホンダeを試そうと思う人も多いのではないか。

もし、1000台があっという間に完売し、その2~3倍もの消費者が買いたいといったらどうするのか? とホンダに問うと、「頑張って生産を増やします」と答えた。

頑張って生産台数を増やせるのであれば、リチウムイオンバッテリー生産の上限には、実はそれほど制約が強くないと邪推してしまいもする。

逆に、初代リーフと比べ、ホンダeは競争力に劣るとでも思っているのだろうか。開発責任者のホンダe開発にかける思いは、もっと熱かったはずである。そして実際、商品性は先進技術も加わりかなり高いと思える。

とすれば、年間で1000台という目標販売台数は、大いなる疑問でしかない。

バッテリーリユースやエネルギー利用への姿勢も不明

販売台数が少ないので、手をこまぬいているのかもしれないが、EV後のリチウムイオンバッテリーの再利用についても「研究している」との答えしかなかった。1000台しか売らないなら、10年後の中古車も最大で1000台しか出ないのだから、リユースやリサイクルの心配がないと考えているのだろうか。

日産が初代リーフの発売前に設立したフォーアールエナジー社では、すでにEVで使用済みとなったリチウムイオンバッテリー再利用の事業をはじめている。近年、各地で起こる大規模災害の支援として、再利用バッテリーの需要は徐々に伸びはじめている。中古のリチウムイオンバッテリーは、価格が約2/3に抑えられるとされ、定置型で利用するには新品を買うより安く手に入れられる利点がある。EVのような加減速性能という変動が少ないだけに、中古でも十分役目を果たすことができる。

EVで使用後のリチウムイオンバッテリーは、新品時と比べて60~70%の容量を残すものが多く、初代リーフの場合はそれ以上の容量を残す高グレードの再利用品もある。EVの普及は、そうしたリチウムイオンバッテリーという資源の有効活用も視野に入れることが、エンジン車と違った重要項目になる。それが、未来へ向けた持続可能な社会を創り出す。

2輪・4輪・汎用の各部門を持ち事業を行っているところがホンダの独自性の一つであり、総合的な資源の有効活用という視点が、現状では十分ではないような気がする。

同じように、V2H(Vehicle to Home)のような、移動と生活が密接な関係を持てるのがEVの特徴であり、これを行うことで、電力の有効利用につながり、家庭での電気代の節約につながったり、災害時の停電対策にもなったりする。それに対する説明も当初は十分でなかった。こちらから質問すると、日産と同じメーカーの装置を使い、日産と同じ電気事業者の一社を通じて、対応できるとの回答であった。

もちろん、そういう準備が整っているなら問題はない。だが、ホンダe開発で、開発責任者が語ったのは、本田宗一郎氏の言葉として「他社の真似をせず、苦しくても独自の技術で、日本一、世界一を目指そう」というものであった。それであるなら、EVの有効性を総合的に活かすうえで、2輪・4輪・汎用の各事業を持つホンダこそが、独自のエネルギー利用の構想を打ち立ててもいいはずだ。

ホンダは、埼玉県でエコハウスの実証実験をやった経験がある。それ以前も、ホンダEVプラスの時代に、ツインリンクもてぎの敷地内にログハウスを建て、太陽光発電を組み合わせたエネルギー利用の実験も行っている。そうした過去の経験が、ホンダeの発売と合わせ、新しい時代のパーソナルモビリティが暮らしに貢献する広がりにつながってこそ、ホンダらしいEV、ホンダeの意義を拡張するのではないだろうか。

事前説明会では、ホンダe開発責任者の説明のなかに、2030年のエネルギー社会の話が出た。だが、それがホンダeの拡張性とつながっておらず、お題目のまま終わっているのではないかという印象ではあった。

そうしたことからも、消極的な販売台数になっているのではないか。多くの人が魅力的と感じるであろうホンダeを市販しながら、その意義が十分に行き渡っていない現実に、もどかしさを覚えずにはいられない。

(取材・文/御堀 直嗣)

【編集部追記】国内発売発表のポイント

Honda e の日本国内発売が発表されたことは、EV普及を応援するEVsmartブログとしてもうれしいニュース、のはずでした。ところが、御堀さんの指摘にあるように販売計画台数は年間わずか1000台、価格も先行発売された欧州よりもおおむね100万円は高いという、いわば「売る気がない」内容であったことに、少なからずがっかりしています。

ともあれ、8月27日に発表(事前説明会は8月5日に実施)された内容のポイントをご紹介します。

【日本国内発売日】2020年10月30日(金)

【希望小売価格 ※税込】
Honda e/4,510,000円
Honda e Advance/4,950,000円

【販売計画台数(年間)】1000台

【グレード比較表】

ラインアップは2グレード。ベーシックモデルの『Honda e』と、より装備を充実させた『Honda e Advance』です。

Advance はベーシックモデルに比べてより高出力のパワーユニットが搭載されるほか、特徴的なデザインの17インチアルミホイール、プレミアサウンドシステムやAC100V電源が標準装備となります。

事前発表会で配布された資料はまだ『暫定版』で、詳細な主要諸元はなかったのでのちほど追記しますが、現開発責任者である一瀬智史氏のプレゼンテーションによると、日本版WLTC基準による一充電航続距離は283km。先行発売されている欧州WLTP値は最大137マイル(約220km)、より実用に近いアメリカEPA換算の推計値で約196kmとなります。

少し驚いたのは、暫定版の事前発表資料に、電池容量や航続距離といった電池性能について一文字も記載されていなかったこと。

電池や充電についての説明はこのページだけでした。

たしかに、35.5kWhという電池容量は、いまどき声高にアピールすることではないかも知れません。でも、欧州では100kW(CCS)に対応している急速充電が、チャデモでも1.2以降の規格で欧州同様の100kWに対応するのかといった点は、実際に購入するユーザーにとっては実用上かなり重要なポイントなので、まるで説明されていないことには物足りなさを感じます。

また、既存の他社EVと比較してもスムーズに急速充電できる充電性能の高さは紹介されたものの、50kWを超える高出力器の整備にホンダがどの程度コミットするかといったことや、自社ディーラー網にどの程度EV充電インフラの拡充を進めるかといった点について、前向きな言葉はありません。

主要諸元(2020年8月27日正式発表を元に追記)

8月27日、正式に主要諸元が発表されました。一充電航続距離は、欧州のWLTP値とアメリカEPA換算推計値を加えています。駆動用バッテリーは2並列。


Honda e Concept Movie(YouTube)

個人的な愚痴になりますが、30kWhリーフが今のマイカーである私は、発売されたらすぐに Honda e を買うつもりで家族の説得を進めていました。価格は欧州並み、NEVと東京都の補助金を使って、Advance で300万円台前半くらいを想定していました。

「どうやらもっと高いらしい」という噂は聞こえていましたが、ホンダが本気で売る気なら、せめてこのくらいの値段で発売してくれるはず! と期待していたのです。

でも、蓋を開けてみれば楽観的想定に比べて100〜150万(おおむね私の中古リーフ1台分)は高かった……。家族を説得できないのと、私自身、「埼玉の工場で作ってるクルマがなんで欧州より100万も高いんだ?」と深く失望したこともあり、「まあ、まだZESP2が2年残ってるしな」と自分を慰めつつ、いったん購入計画を凍結することにしました。

発表された価格、そして年間1000台という販売計画台数は、ホンダというメーカーからの「あんまり買わないでね」というメッセージだと受け止めています。電気自動車というプロダクトは、自動車単体ではなく、充電インフラを含めた持続可能なエネルギーへの希望も合わせて「価値」が高まるものだと思っています。メーカー自身が売る気のない電気自動車を発売しても、誰も幸せになれないのではないかと危惧します。

2年後、ホンダが100kWクラスの充電インフラ構築に熱意を見せてくれるようになっていたら、タマは少ないでしょうが、中古での購入を改めて検討してみたいと思います。

あ、あとEVユーザーの一人としては、充電ポートを開けると真上ががら空きであまりにも雨ざらしになるので、雨中での充電時にちょっと気持ち悪そう、というのが気になってます。このあたりは、機会を改めて試乗レポートをお届けできるよう考えます、ね。

【関連記事】
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(EVsmartブログ編集長/寄本 好則)

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August 27, 2020 at 08:13AM
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