Sunday, March 8, 2020

S&P500 2月レポート:新型コロナウイルスは株価下落の「原因」なのか、それとも「きっかけ」にすぎないのか - トウシル

THE S&P 500 MARKET: 2020年2月

 2月の最終週、空が落ち、世界は終末に近づきました。S&P 500指数は2日連続で3%下落し、その後さらに4%下落して(その後も下落は続きました)、この11年間の強気相場しか知らない投資家やトレーダーを打ちのめしました。願わくば、3月11日になって、強気相場の11周年を祝うバースデーカードが安く売られていますように。

 そうした投資家やトレーダーは、「こんなことが起こるなんて誰も教えてくれなかった」と文句を言っていますが、市場がパニックになることはありませんでした。取引は一方的でしたが秩序が維持され、また今では電話で取引することがなくなったため、理論的にはマージンコールは発生せず、誰かが窓から身を投げる理由もありませんでした。もっとも今は、大半の窓は開かないようになっていて、かつてのティッカー・テープ・パレード(ビルの窓から紙吹雪が投げられるパレード)もあまり見かけなくなりました ―― ヤンキースが最近優勝から遠ざかっていることもあります。

 私ぐらいの年代以上の者にとってマーケット暴落はデジャブのようなもので(バーで昔の苦労話を語る絶好のチャンスです)、市場の反射的な反応(現れるのが遅かったとの声も多く聞かれます)は、「新型コロナウイルスが米国に侵入」した場合の直接的影響、供給サイドに起因するより大規模な経済的損失、そして個人消費の落ち込みに伴うさらに深刻な打撃を咀嚼する方向に変化しました。企業支出が精彩を欠くため、個人消費が売り上げを支えてきましたが、現時点において、当面マイナスの経済的影響を及ぼす可能性が極めて高くなっています。

 また、老若男女を問わず投資家に対するダメージも大きく、S&P 500指数は1週間で11.49%下落し、2月19日に付けた終値での最高値から12.76%下落、月間では8.41%下落、年初来では8.56%の下落となり、正式に調整局面入りしました(過去最高値を6回更新した同じ月にです)。時価総額は最高値から3兆5,800億ドル減少、月間で2兆2,400億ドル減少し、グローバル市場の時価総額もそれぞれ6兆9,900億ドル、4兆8,700億ドルの減少となりました。

 金利は低下し、安全資産への逃避の動きから米国10年国債利回りと同30年国債利回りは過去最低を更新しました(月末時点でそれぞれ1.15%と1.68%)。市場はFRB(米連邦準備制度理事会)が3月と4月に利下げを行うことを織り込んでおり、4月に50bpの利下げを予測する向きもあります。1月に1バレル当たり63ドルを超えた原油価格は一時45ドルを割り込み、45.26ドルで月末を迎えました。中国への渡航歴のないウイルス感染者が初めてカリフォルニア州で報告されたことを受けて、企業は2020年第1四半期の業績に警告を発し始めました。

 第1四半期の利益予想は既に5.0%引き下げられていますが、100社近い企業が注意喚起していることから、さらなる下方修正が予想されます。政府は対策を強化し、トランプ大統領はペンス副大統領を新型コロナウイルス感染の対策担当に任命しました。バーでのもう一つのとびきりの話題は(昔話から現在に戻すと)、新型コロナウイルスが「原因」なのか、それとも「きっかけ」にすぎないのかです。市場の反応のどの程度がウイルス感染懸念によるものなのでしょうか。

 これまで株価が大きく値を下げることもなく最高値を更新したことで、市場は利益を確定する理由を探していたのかもしれません(S&P 500指数は2月19日に最高値を記録)。現時点での答えは、1月の下落と同様に「私たち」全員が売り時を模索していたことから、調整のタイミングにあったということと、新たな見方として、新型コロナウイルスが米国の企業利益や市場にとって最大の脅威になったということです。感染の拡大と市場への影響は制御されておらず、投資家にできることは備えを怠らず、状況に応じて反応することしかありません。目下の結論としては、市場はコンセンサスの見方に基づいて銘柄に対する影響を見定め、株価はそれに応じて調整しており、今後実際に何が起こるのかを注視しているということです(市場は感じたことにまず反応し、その後に事実に反応するものです)。

 過去の実績を見ると、2月は53.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.88%、下落した月の平均下落率は3.34%、全体の平均騰落率は0.01%の上昇となっています。また、3月は60.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.32%、下落した月の平均下落率は3.61%、全体の平均騰落率は0.61%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、3月17日-18日、4月28日-29日、6月9日-10日、7月28日-29日、9月15日-16日、11月4日-5日(米大統領選は11月3日)、12月15日-16日、2021年1月26日-27日となっています。

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