Monday, July 6, 2020

新型コロナワクチン臨床試験開始|NHK 関西のニュース - nhk.or.jp

新型コロナウイルスのワクチンを人に投与して、安全性や有効性を確かめる臨床試験を、大阪・茨木市にあるバイオベンチャー企業が30日、開始したと発表しました。
新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験が、国内で始まるのは初めてです。

臨床試験を始めたと発表したのは、大阪大学の研究者が設立したバイオベンチャー企業「アンジェス」です。
発表によりますと、臨床試験では、アンジェスが開発した新型コロナウイルスのワクチンを、健康な成人30人に大阪市立大学医学部附属病院で投与します。
投与するのは2週間ごとに2回で、安全性や感染を防ぐ抗体が作られるかを確認します。
今回のワクチンは、DNAワクチンというタイプで、ウイルスそのものは使わずにウイルスの表面にあり、細胞に感染する際の足がかりとなる、「スパイクたんぱく質」の遺伝子を組み込んだ物質を注射します。
注射のあと、スパイクたんぱく質が現れ、それに応じて免疫機能が働いて抗体を作るということです。
新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験は、アメリカや中国などですでに始まっていますが、国内では初めてです。
このワクチン開発をめぐっては、大阪府の吉村知事が、「命を守れるワクチンの開発を実現し、ウイルスとのたたかいの反転攻勢につなげていきたい」と述べるなど、早期の実用化に期待感を示しています。
ワクチンの開発では、ワクチンを投与することで、その後の感染を促進させてしまうADEという現象が起きる可能性があり、慎重な確認が必要だとされています。
また、さまざまな性質がある抗体の中で新たな感染を防ぐことができる「中和抗体」が作られるのか確認も必要で、これらの課題を乗り越えて開発が成功するのか、注目されます。

【専門家“開発の初期段階”】。
ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健 教授は、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験が、国内で初めて大阪で始まることについて、「臨床試験が始まったことは、ゴールではなくて始まりと言える。プロトタイプ(=原型)をヒトに投与して、安全性はもちろんのこと、効くのか効かないのかを最終的に見極める実験が始まった段階だ。臨床試験で最も重要なのは、安全性をとことん見極めることだ」と話し、臨床試験の開始はワクチンの完成に向けた初期段階に過ぎないとして、期待が先行することに警鐘を鳴らしました。
また、DNAワクチン自体の課題として、これまでに実用化されたことがない新しい技術だとしたうえで、「DNAワクチンは動物用の医薬品には承認されているほか、安全性の危惧が指摘されたこともあったが、いまはワクチン自体の安全性は問題ないとされている。ただ、本当に感染を防御できるだけの免疫を誘導できるのかや、何千万人もの人に投与する大量生産ができるのかが、これから問題になる」と指摘しました。

【ワクチン開発とは】。
ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健 教授によりますと、ワクチンの開発には、一般的に10年単位の長い年月がかかるということです。
基礎研究を何年も続けた上で、非臨床試験という、▼細胞を使った試験管レベルでの実験や、▼動物を使った実験を積み重ねて、いったんワクチンを完成させます。
続いて、ヒトに投与して安全性や有効性を確かめる臨床試験に入ります。
これは3段階行うことが求められます。
▽数十人程度の少人数に接種して主に安全性を確かめる第1段階、▽数百人に接種して効果を詳しく確かめる第2段階、▽数千人の規模で接種してさらに検証する第3段階があります。
3つの段階で、安全性と有効性が確認されたうえで、国による審査を受けて、製品化されます。
一連の研究、開発で早くても5年、長いものでは20年から25年かかるということです。
動物実験の段階で効果があるとされても、その後の臨床試験で、ヒトへの有効性や安全性が十分ではないと判断され、開発が中止になるケースもあり、数多くの研究の中から実用化にこぎ着けるのはわずかだとされています。
石井健授は、今回、新型コロナウイルスのワクチン開発は、世界中で異例のスピードで進んでいると指摘しています。
石井教授は「通常、感染症のワクチンを開発する場合、感染症を防御できることを動物を使った実験で確認しなければいけないが、各国が同意して、動物の実験なしでヒトでの臨床試験が始まっている。フェーズ1、2、3の段階も、ひとつが終わってから次に取りかかるのではなく、同時に進めることで、早く終わらせようと世界中が努力している」と説明しています。

【ワクチン開発の注意点】。
ワクチンは、毒性を無くしたウイルスやウイルスに似せた無害な物質を体に投与することで免疫機能に「抗体」を作らせ、病原体の形を体に覚えさせて、その後の感染を防ぎます。
ワクチンの開発を進めるうえで最も重要なのは、ワクチンの安全性と有効性の確認です。
安全性で懸念されることのひとつが、ADE=抗体依存性感染増強という現象です。
抗体は、本来であればウイルスから体を守るものですが、ワクチンの接種後、ウイルスに感染したとき、かえって、感染を促進して症状を悪化させる現象です。
なぜ、この現象が起きるのか、詳しい仕組みはまだ、解明されていません。
実際に、SARSやMERSといった過去のコロナウイルスのワクチン開発の過程では、動物実験でかえって症状が悪化したケースがあったということで、安全性を慎重に確かめることが求められます。
また、ワクチンの有効性を確かめるうえでは、どのような種類の抗体が作られるのかも重要です。
ヒトの免疫機能が働いて抗体が作られても、すべての抗体が新たな感染を防ぐわけではありません。
さまざまな種類がある抗体のうち、中和抗体と呼ばれるものでなければ感染を防ぐことができません。
作られた抗体が中和抗体かどうかは、この抗体を加えた細胞にウイルスを感染させる実験を行って確認するほか、動物を使った実験で確認することもあります。
これらの実験を済ませたうえで、ヒトに投与する臨床試験に踏み切ることが一般的だとされています。

【大阪で進むワクチン開発】。
大阪を拠点とする研究機関や企業では、さまざまな種類のワクチンの開発が同時に進んでいます。
大阪大学 微生物病研究所の小林剛教授は、不活化ワクチンの開発に取り組んでいます。
不活化ワクチンは、ウイルスそのものを使って開発する技術です。
ウイルスを増殖させたうえで、特殊な操作で感染力を低くして、ヒトに投与します。
新型コロナウイルスは、アフリカミドリザルの細胞でうまく増殖することが明らかになっていて、小林教授のグループは、より効率的に増殖させる方法を探っています。
小林教授は「不活化ワクチンは、すでにいろいろなウイルスで実用化されている技術なので、新型コロナウイルスでも有効ではないかとみている。ウイルスをうまく増殖させることは、生産性の向上や供給量の確保につながるので、重要なステップだと考えている」と話しています。
大阪大学 微生物病研究所の松浦善治教授は、VLPワクチンの開発を進めています。
VLPワクチンは、ウイルスそのものは使わず、ウイルスの遺伝情報を操作して、ウイルスの表面にあるたんぱく質を人工的に製造します。
松浦教授のグループは、外見はウイルスそっくりにもかかわらず、中身は空っぽで、感染することはできないウイルスのような物質を作ることに成功しました。
今後、この物質に対して、免疫機能が働いて抗体がきちんと作られるのか、動物を使った実験などで確認を進めることにしています。
松浦教授は「ワクチンの開発では、動物実験でいい結果が出てもヒトに打つと効果がないことも多く、楽観はしていない。私たちは、考えられるすべての種類のワクチン開発を試していて、どれがベストかを見極めて1つに絞っていこうと考えている」と話しています。
▽大阪大学の研究者が設立した、大阪・茨木市のバイオベンチャー企業「アンジェス」は大阪大学と協力して、DNAワクチンを開発しています。
DNAワクチンもウイルスそのものは使わず、ウイルスの表面にあり細胞に感染する際の足がかりとなる、「スパイクたんぱく質」の遺伝子を組み込んだ物質を作って注射します。
注射のあと、体内でスパイクたんぱく質が現れ、それに応じて免疫機能が働いて抗体を作るということです。
このほか、大阪市に本社がある大手製薬会社の「塩野義製薬」は、国立感染症研究所と協力して、遺伝子組み換え技術を活用して、新型コロナウイルスの表面にあるのと同じ形のたんぱく質を作り出す方法で、ワクチンの開発を進めています。
ワクチンの開発は難しく、実用化には至らないことも多いことから、複数の研究が同時に行われる意義は大きいとして注目されています。

Let's block ads! (Why?)



"それに応じて" - Google ニュース
June 30, 2020 at 02:14PM
https://ift.tt/2BQbH9e

新型コロナワクチン臨床試験開始|NHK 関西のニュース - nhk.or.jp
"それに応じて" - Google ニュース
https://ift.tt/37sUoVL
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
Share:

0 Comments:

Post a Comment