オーストラリア(豪州)経済が中国の経済発展の恩恵を最も受けてきた国であることは、ちょっと投資をかじった人にとっては周知の事実である。本書『目に見えぬ侵略――中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社)は、その陰で中国がオーストラリア政財界にじわじわ進出、今では安全保障が脅かされるほどなっていると警告する。筆者は大学の公共倫理学部の教授。原著は、中国側の報復を懸念した複数の大手出版社から出版を断られ、独立系の出版 社によって出版にこぎつけられたらしい。
農地も買いあさっている
近年、中国の過剰投融資を受け入れたせいで、港など国の一部を長期に貸し出さざるを得なくなったアフリカなどの途上国の話を頻々に耳にするが、豪州でも同じようなことが次々に起きている。
本書によると、2014年、中国企業・招商局集団が世界最大の石炭積出港・ニューキャッスル港を買収、15年、中国企業がダーウィン港の「99年の租借権」買収、16年、投資家コンソーシアム(中国国営ファンド・投資有限責任公司が20%を占める)がメルボルン港を購入している。
電力インフラにも目をつけ、中国国営企業の国家電網公司は「ビクトリア州の5つの電力会社の所有権と、南オーストラリア州唯一の送電会社の一部」を所有している。この送電会社の残りの所有権は香港の長江基建集団が握っている。
農地も買いあさっている。中国人の農地所有数は英国人に次いで2位になっている。土地全体では英中で全体の25%を占める。
最近の中国による東、南シナ海への力ずくの進出は無法者の振る舞いとしか思えない。国連海洋法条約の仲裁裁判所で領有権の根拠の一つとして、中国があげたのは明・永楽帝時代の「鄭和の大航海」だった。もちろん裁判では退けられたが、中国人はそれが通ると本気で考えている節もある。
本書によれば、中国共産党中央宣伝部のウェブサイトには、鄭和は英国のジェームズ・クック船長より数世紀も前に豪州北西部に到達した可能性があると記されているという。
豪州人口の5.2%
胡錦涛国家主席は2003年、豪州議会で次のように演説した。「明朝の遠征艦隊がオーストラリアの岸にたどり着き、その後の数世紀にかけて、中国人はこの土地へ海を越えて航海し、住み着いたのです。彼らは中国の文化をこの地にもたらし、現地の人々と調和して生き......多元的共存文化に貢献したのです」
今にも「豪州は本来中国のもの」と言い出しかねない内容だ。
長く白豪主義を貫いてきた豪州は、1970年代末から各国から移民を受け入れる多文化主義に転じた。その結果、中国からの移民や留学生が急増、2018年現在で130万人を超え、豪州の人口の5.2%を占めているという。
本国以外の国にいる中国人を華僑という。華僑に対する政策は党中央統戦部が決め、国務院僑務弁公室という政府機関がそれを実行する。党は華僑に対して「祖国への忠誠を第一にするよう期待している」。具体的には、留学や移住した先の国でも、中国大使館などの指示によって中国の政策を支持する運動をしたり、選挙で中国が望む政策を進める政治家に投票したりすることが求められる。これに従わない中国人は、中国に残る家族や縁者が嫌がらせを受けたり、帰国した際に冷遇されたりするのだという。
本書は、豪州の大学や企業、経済界など多分野で主要ポストにある中国人の多くについて、中国国内にも重要ポストを与えられている例を多数紹介し、企業秘密や研究成果が筒抜けになっている懸念を示す。
昨年の豪州総選挙では、中国の情報機関によるとされる議会へのサイバー攻撃や候補者の立候補工作、中華系票の取り合いなどのニュースが伝えられたことは記憶に新しい。本書を読んで、あの騒動の根深さを知った。いわゆる嫌中嫌韓本を多く出してきた出版社の本ではあるが、今後の中国との付き合い方を考えるための貴重な1冊だと感じた。
BOOKウォッチでは関連で『腐敗と格差の中国史』(NHK出版新書)、『習近平のデジタル文化大革命』(講談社+α新書)、『チャイナスタンダード』(朝日新聞出版)、『日本の「中国人」社会』(日経プレミアシリーズ)、『領土消失――規制なき外国人の土地買収『 (角川新書)なども紹介している。
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August 01, 2020 at 05:01AM
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