2020年07月08日 17時29分
九州と本州を縦断するように停滞する梅雨前線の影響で、大雨の範囲が拡大し、気象庁は8日、岐阜県と長野県に一時、大雨特別警報を出しました。多くの河川で氾濫が確認されている今回の大雨。国はハザードマップに支流を起点とした被害想定を盛り込むことを進めていますが、完成には時間がかかりそうです。今回の大雨で、入所者14人の死亡が確認された熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」。東北大学で洪水を専門とする橋本雅和助教は、多くの犠牲者が出た要因を次のように分析しています。東北大学災害科学国際研究所・橋本雅和助教「球磨川の水位がかなり上がっていましたので、球磨川の水位が上がったことで支流が流れ込んでいけないという状況は起こっていたと考えています」橋本助教が指摘するのは、本流の流れが強いために川の合流付近で支流の流れがせき止められ水位が上がってしまう「バックウォーター現象」です。東北大学災害科学国際研究所・橋本雅和助教「(バックウォーター現象は)昔より起こりやすくなっているというイメージです。本流がどこかで破堤すると大変な被害が出るので、そこを守るというのが一番最初に河川整備で進められる部分なんです。それに応じて支流の方も堤防を高くしなければいけないんですが、それが今できていないところがあって、そこで災害が起こっている」堤防を増強した本流は、強力な川の流れに耐えられるようになります。一方で、本流の流れが強くなればなるほど、支流からの水がせき止められやすくなり、バックウォーター現象が発生しやすくなるのです。去年10月の台風19号「東日本台風」では長野県・千曲川の支流の堤防が決壊。2018年7月の西日本豪雨で発生した決壊もバックウォーターが原因との調査結果が出ています。東北大学災害科学国際研究所・橋本雅和助教「最近の災害の傾向を見ても、中小河川で人的被害が出るケースが多くなってきていますので、中小河川の洪水氾濫リスクをハザードマップで可視化という流れは今後必要になってくると思います」東日本台風で支流を中心に甚大な被害が出た宮城県丸森町では専門家のアドバイスを受け、新たなハザードマップを作成する考えです。東北大学災害科学国際研究所・柴山明寛准教授「支流に関しては内川、五福谷川、雉子尾川などの2級河川が恐らく含まれると。2級河川が含まれることで町の平野部に関してはかなり広い範囲でカバーできると思われます」しかし、県によりますと、現在は今年度対象となる約50の中小河川の選定を終え、各市町村がハザードマップを更新する際に使う浸水想定図の作成を業者に発注したばかりです。浸水想定図は今年度中に完成する見通しで、台風シーズンには間に合わないのが現状です。東北大学災害科学国際研究所・柴山明寛准教授「近年、風水害が甚大化して数多く発生しておりますので、なるべく早いハザードマップの準備が必要になると思います」
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