Thursday, March 19, 2020

政府の専門家会議 提言まとめる|NHK 北海道のニュース - nhk.or.jp

新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が19日夜開かれ、感染源のわからない患者が継続的に増加し続ければ、爆発的な感染拡大が起きるおそれもあるとして、対策の徹底を求める提言をまとめました。また、大規模なイベントは引き続き慎重な対応が求められる一方で、感染が確認されていない地域での学校活動やスポーツ観戦などはリスクを判断したうえで実施するよう求めています。

政府の専門家会議は19日夜、8回目の会合を開き、座長を務める国立感染症研究所の脇田隆字所長らが出席し提言をとりまとめました。
この中で、現在の状況について、引き続き持ちこたえているものの、感染源のわからない患者が継続的に増加する地域が全国に拡大すれば、どこかで「オーバーシュート」と呼ばれる爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないなどとする見解が示されました。
そのうえで今後の対策は、地域の感染状況に応じて進めていく必要があると指摘しています。
具体的には、感染が拡大傾向にある地域は、まん延を防ぐために独自のアラートや、外出などの一律の自粛の必要性を検討し、期間を十分に見極めて導入するよう求めています。
感染が収束に向かい始めている地域などは、リスクの低い活動から徐々に解除を検討すべきだとしています。
感染が確認されていない地域では、学校の活動や屋外でのスポーツ観戦、それに文化・芸術施設の利用などで、リスクの低い活動から実施してほしいとしています。
一方、全国的な大規模イベントは、集団感染や各地に拡散するリスクがあり引き続き慎重な対応が求められると指摘しています。
そして、国内外の感染状況を考えると短期的収束は考えにくく、長期戦を覚悟する必要があるとしています。
政府は専門家会議の提言を基に、イベントの自粛や学校の休校の要請に関する今後の対応を検討することにしています。

【北海道の対策は一定の効果】
政府の専門家会議は北海道での対策について、知事による緊急事態宣言をきっかけに、住民が日常生活の行動を変え事業者が迅速に対策を講じたことによって、急速な感染拡大の防止として一定の効果があったとしています。
一方で、依然として流行は明確に収束に向かっておらず憂慮すべき状態が続いていると指摘しています。

【提言 具体的には?】
新型コロナウイルス対策の専門家会議がまとめた「状況分析・提言」では、現在の国内の状況を分析したうえで国民に向けた提言が盛り込まれました。
現在の状況として、北海道については、先月28日に緊急事態宣言を出して週末の外出自粛などを呼びかけて以降、一定程度、新規感染者の増加を抑えられていることを示しているとしましたが、依然として流行は明確には終息に向かっておらず、憂慮すべき状態が続いているとしました。
ただ、緊急事態宣言は急速な感染拡大の防止という観点からみて一定の効果があったとしました。
また、北海道以外の国内の感染の状況については引き続き、持ちこたえているものの、一部の地域で感染拡大が見られるとしました。
特に感染源の分からない患者が増加している地域が散発的に発生しているとして、今後、こうした状況が増え続け全国的に拡大すれば、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないとしました。
これまでの国内の対策については若干の効果があったとする見解を示しながらも海外からの流入があることなどから、引き続き動向を注視し、感染拡大のリスクが高い環境での行動を十分抑制することが重要としました。
そのうえで、今後の見通しとして、もし大多数の国民や事業者が人と人との接触をできる限り絶つ努力や、密閉空間、人の密集、近距離での会話や発声という3つの条件が同時に起こる場所を避ける努力を続けていかないと、感染に気がつかない患者の集団「クラスター」が発生し、ある日、「オーバーシュート」と呼ばれる爆発的な患者の急増が起こりかねないと指摘しました。

また、専門家会議の提言では、はじめにクラスターと呼ばれる患者の集団への対応の重要性を挙げ、今のクラスター対策を迅速に抜本的に拡充する必要があると指摘しました。
具体的には人材の確保や自治体どうしの強力な連携や情報共有、対策に当たる保健所の人員や予算の投入などを挙げています。
また、重症者を優先する医療体制に迅速に移行するための検討を進めるべきとしました。
この中では、強いだるさや息苦しさがある人や高齢者、それに基礎疾患がある人たちは早めに受診してもらう一方で入院治療が必要ない軽症者については自宅療養として電話で健康状態を把握することとしました。
春休み明けの学校については、地域ごとの流行の状況を踏まえることが重要だとし、日々の学校生活で集団感染のリスクが高くなる3つの条件が同時に重なる場を避けるなどの対策の必要性を強調しました。
そして、全国規模の大規模イベントなどについては、集団感染のリスクや感染を拡大させるリスクを指摘し、屋内か屋外かや人数の規模によらず、集団感染が起きると全国的な感染拡大につながることが懸念されるとしました。
こうしたリスクに対応できない場合は中止や延期が必要だとしました。
このほかにも感染者や濃厚接触者、それに治療にあたる医療従事者などに対する偏見や差別につながる行為は断じて許されないこと高齢者や持病のある人など重症化のリスクが高い人は不特定多数の人がいる場所への訪問を避けることなどが盛り込まれました。

【大規模流行になると・・・】
専門家会議がまとめた「状況分析・提言」では、大規模な流行が起こって十分な措置がとられなかった場合にどのような事態になるのか、北海道大学の西浦博教授の推計が盛り込まれました。
推計では人口10万人の地域を想定し、感染拡大のスピードは現在のヨーロッパと同程度と仮定しました。
その結果、流行50日目には1日の新たな感染者数は軽症の人も含めると5414人にのぼり、最終的に人口の79.9%が感染すると考えられるということです。
また、人工呼吸器などが必要な重篤な患者は、流行62日目には1096人にのぼると推計されたということで、地域の医療の限界を超えてしまうことが想定されたということです。
専門家会議では、実際にはクラスター対策などの強力な措置をとることで、地域の医療提供体制を上回らないようにするべきだと指摘しました。

【専門家たちは?】
専門家会議のあと会見を行った北海道大学の西浦博教授は、北海道で先月下旬から行われた一連の対策の効果について、「北海道では、緊急事態宣言が出されたあと、感染者の減少傾向が顕著になっている。まだ予断を許さない状況が続いているが、多くの方の協力によって『北海道モデル』と呼べる取り組みが成功したのではないかと考えている」と話しました。
また、国内全体の状況や今後の対策のあり方については、「自粛などの取り組みや多くの人たちの協力によって、希望の光が見えてきたと思っている。強力な行動の制限は感染拡大を抑えることはできるが長く続けることはできない。『日本モデル』として、長期間、持続可能な対策のあり方をなんとか見いだせないかいま必死に模索している」と話しました。
その一方で全国的な大規模イベントの開催については「仮に大規模なイベントを開催してそこで、非常に大きな感染者の集団、メガクラスターが発生してしまうとこれまでの努力が水泡に帰すおそれがある」と指摘しました。

専門家会議のあと記者会見に出席した防衛医科大学校の川名明彦教授は今後、感染の拡大に備えて必要な医療体制について、「患者の数が大きく増えると軽症の患者に入院してもらう状況ではなくなってくる。重症の人は高い機能がある医療機関で治療し、軽症の人は一般の医療機関や診療所にいってもらうなど医療機関の役割分担が必要で、その準備を進めなければならない。現時点で対応できなくなってしまった医療機関はないという理解だが、多くの感染者が報告されている地域は特にその懸念が高まっていると考えている」と述べました。

記者会見に出席した専門家会議の副座長で、地域医療機能推進機構の尾身茂理事長は、全国的な大規模イベントの開催は主催者がリスクを判断するよう求めたことについて、「閉鎖されていない屋外で開かれるものでも、全国から不特定多数の人が参加するイベントで集団感染が起きたら全国に波及するおそれもあるため、皆さんには慎重に判断してもらいたい。開催を決めてもイベントの準備を進める中で異変を感じれば、中止の判断もしてほしい」と話しました。
そのうえで、「イベントの開催をめぐってはさまざまな意見が出たが、専門家ごとに方法論が異なるだけで、国内でいつ大規模な感染拡大が起きてもおかしくないという危機感は、すべての委員が持っている」と話しました。

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