大阪市北区曽根崎新地のビル4階のクリニックから出火し、24人が死亡するなどした放火殺人事件で、クリニックに通院歴のある男(61)が催涙スプレー2本を持参していたことが19日、捜査関係者への取材で分かった。クリニックにある複数の防犯カメラに、男が来院から数分で放火するなど一部始終が写っており、大阪府警天満署捜査本部は、男が事前に入念な準備をして襲撃した疑いが強いとみている。
捜査本部は19日未明、事件に関与した疑いのある男の身元を、住所・職業不詳の谷本盛雄容疑者と公表した。重度のやけどや気道熱傷、一酸化炭素中毒のため、病院で治療を受けているが意識不明の重体。逮捕状請求前に氏名を公表したことについて、府警捜査1課の冨山浩次課長は「被害者やご遺族が容疑者の早期特定を望んでいる。事案の重大性もかんがみた」とした。
捜査関係者によると、搬送された谷本容疑者の所持品を確認したところ、催涙スプレー2本が見つかった。クリニックの防犯カメラには、谷本容疑者が大きな紙袋2つを両手に持って来院し、受付を済ませて出入り口付近の床に置いた紙袋を蹴り倒してしゃがみ込み、紙袋から漏れ出した液体から火が立ちのぼる様子が写っていた。出火後も谷本容疑者に逃げる素振りはなく、火の中に入っていくような行動を取っていた。
来院から放火までは1~2分しかかかっておらず、捜査本部は谷本容疑者が襲撃を阻止されないようスプレーを準備した可能性があるとみている。
事件では、心療内科「西梅田こころとからだのクリニック」にいた27人が心肺停止となり病院に搬送されたが、20~60代とみられる男女24人が死亡した。府警は19日までに、犠牲者14人の身元を明らかにした。
捜査関係者によると、谷本容疑者は大阪市西淀川区姫島の3階建て住宅が居住先で、ビル火災の約30分前には居住先の2階一室の床が燃える火災が発生。府警などの調べで、焼けた床付近から油分が検出された。現場ビルでもガソリンのような油分が検出されており、捜査本部は同一の液体が使われた可能性があるとみて、今後油分を詳しく鑑定する。
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