東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機再稼働の前提となる「地元同意」を村井嘉浩宮城県知事が政府に伝えてから先月18日で1年がたった。東北電が2022年度以降の再稼働を計画する中、県は重大事故時の広域避難計画の実効性向上に努めるが、確実に避難できる環境の実現はなお遠い。
2号機は昨年2月に原子力規制委員会による新規制基準適合性審査に合格。翌3月、国が村井知事に同意を要請した。住民説明会や県議会での賛成請願採択、立地2市町の意向確認を経て知事が昨年11月11日に同意を表明。18日に経済産業相に伝達した。
東日本大震災の被災原発という点に加え、過酷事故を招いた東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型炉(BWR)として再稼働への地元同意は全国で初めてのことだった。
課題が残る中、焦点となるのが避難計画の確実性だ。原発30キロ圏の約20万人が県内31市町村に逃れる内容で昨年6月、国の原子力防災会議に認められた。県は避難ルートや行き先の分かる地区別のパンフレットを作って年明けにも対象全戸に配る方針。避難者を受け入れる自治体やバス事業者との協議も続ける。新型コロナウイルスの影響で延びた国との初の原子力総合防災訓練は21年度内に実施される見通しとなっている。
だが、計画の妥当性を疑問視する声は後を絶たない。今年5月には地元住民が計画に実効性がないとして再稼働差し止めを求める訴訟を提起した。避難計画に焦点を絞った国内初のケースとみられ、今後の審理に注目が集まる。
避難に不可欠なインフラ整備も焦点となる。懸案の一つが三陸沿岸道石巻女川インターチェンジ付近と女川町をつなぎ、未整備区間のある国道398号石巻バイパス。大雨による冠水被害が頻発した国道の迂回(うかい)路に当たり、重大事故時の主な避難道になる。未整備区間に関して県は今年8月、山側にトンネルを掘る全長約6・5キロの新ルート案を立地2市町に示したが、予算措置は講じられていない。
東北電は約3400億円をかけて安全対策工事を進める。2号機の新規制基準に関する3段階の審査のうち2段階目の「工事計画」認可申請で6回目の補正書を規制委に提出した。これまで4度の工程変更を強いられており、進展は予断を許さない。
地元同意に際し、県などは東北電に安全の確保を求めたが、女川原発ではこの1年で硫化水素による中毒事故といったトラブルが相次ぎ、県などの立ち入り調査が計4回実施された。安全徹底に厳しい目が注がれている。
そもそも地元同意に民意が十分に反映されたのか、県民の間には今も疑念がくすぶる。重大事故への備えとして不断の改善が求められていることを関係機関は改めて肝に銘じてほしい。
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