Sunday, March 8, 2020

財務目標をはっきりさせ、計画策定・PDCAを - 農業協同組合新聞

甲斐野新一郎 氏◆JA経営をめぐる環境変化
 JAをめぐる環境は平成20年代と令和では大きく異なる。20年代は預金増加と農産物価格の上昇により事業総利益の減少は緩やかで、事業管理費も緩やかに減少したことから、事業利益は安定的に推移した。令和時代になると預金奨励施設の段階的引き下げや預金奨励施設により、貯金・預金増加による収益増が困難になり、その中で必要な利益確保を図らなければならず、新たな局面に対応した経営改革を実現する必要がある。


◆JAの経営改革と経営管理
 JAがどのようなプロセスで経営改革を実現していくかについて、現在実施している個別コンサルや研修会での課題分析と経営管理手法の見直しを紹介することで参考としていただきたい。なお、個別コンサルは財務・会計系のコンサルであり、個別課題を解決するものではなく数値化された事業計画とPDCAの実践を図るものである。


◆JAの課題分析ー収支シミュレーションの実施
 JA経営の将来見通しを明らかにするために、収支シミュレーションを実施する。信用事業の環境変化とトレンドを中心に事業総利益の推移を推計し、事業管理費については横ばいで推移するという前提のもとに事業利益がどのような水準になるか(成行きシミュレーション)を推計する。

 JAが総合事業を営むためには一定の自己資本比率を維持しなければならず、これを基本にJAの目標利益を設定し、シミュレーションとの差額を改善目標とする。成長戦略や効率化戦略の策定を通じて改善目標が達成できる財務計画を策定していく。

〈農業センサスの分析〉
 事業計画を策定する上では、地域の農業構造がどのように変化するかを想定するとともに、JAのシェア分析が必要である。このために農業センサスの分析を行う。

〈部門別損益分析〉
 JAが総合事業体として多様な事業を実施しているため、それぞれの事業がどのような課題を持っているかを明確にする必要がある。それを分析する手段が部門別・場所別損益の分析である。部門別損益の分析は通常、特定年度の部門別損益の状況を比較するために作成される場合が多い(クロスセクション分析)。部門別損益は時系列(タイムシリーズ)で分析することにより課題が明らかになる。収益は増加しているのか低下しているのか、粗利率(事業総利益率)はどのように変化しているのか、管理費の内訳はどのように変化しているのかこれを分析することで各事業の課題を明らかにする。

〈営農経済事業の業務量調査〉
 部門別損益では事業管理費は人件費、減価償却費、その他費用に区分される。人件費は事業管理費の7割を占めるが、その人件費を業務内容ごとに分析するための手法が業務量調査であり、販売、生産購買、営農指導などの営農関係業務に従事する者に対して実施する。業務内容まで分析することでコスト構造と効率化可能な業務を絞り込むことが可能となる。


◆成長・効率化戦略の検討
 以上の様な課題分析を経てから具体的な成長・効率化戦略を検討する。検討にあたっては、部門別ヒアリングを通じて現場の課題を明らかにするとともに、課題別のプロジェクト等を通じて実施する。成長・効率化戦略の検討にあたっては全農等が県域で検討している広域マスタープランについても検討する。

経営管理手法の見直し ー戦略の数値化と財務計画・重要指標
 検討した戦略は部門別損益計画として数値化する。JAの場合中期計画などで財務計画を策定する場合、事業総利益までを各部門が策定し、事業管理費については企画部門で作成する場合が多い。そのような管理形態をレベニューセンター(収益管理)という。戦略の数値化にあたっては、部門ごとの事業利益に着目した管理(プロフィットセンター)を実施する。

 部門別の事業利益で管理する前提として、改善目標額を部門ごとに大まかに配分する。各部門で設定された事業利益の成長・効率化戦略を数値化し、それを合算したものがJAの利益計画になる。収益管理から利益管理に変更するのは、信用・共済事業の収益が低下する中で、信用・共済事業の管理費の削減策を組込む必要があるためであり、営農・経済事業部門についても事業利益の改善計画を策定する。利益管理を行うことで、事業総利益が拡大する(成長戦略)場合は要員増や投資が可能となり、事業総利益が減少する場合は管理費の削減を検討することで、経営資源の効率的な配分を行う。

 損益データのみでは日常的な管理が難しく、直観的にもわかりにくいので、部門損益に直接関連する指標を重要指標(KPI)として設定する。

〈戦略の行動計画化〉
 財務目標、重要指標(KPI)などの数値目標はあくまでも、結果指標でありそれらの数値目標を実現するためのJAの取り組みが重点実施事項・行動計画である。財務目標・重要指標(KPI)と重点実施事項・行動計画を関連付けたものとして「ロジックツリー」を作成し計画の整合性を検証する。

〈計画を着実に実践するために(進捗管理)〉
 計画が実践されているかは定期的に検証し、目標が達成されない場合、JAの取り組みを見直すのがPDCAである。JAの進捗管理では行動、特に重点実施事項が実施されているかを検証するケースが多いが、これでは手段と目的が逆転している。計画の目的はあくまでも財務目標(事業利益)であり、それを実現するための重要指標(KPI)の達成である。重点実施事項や行動計画はあくまでも目標達成するための手段であり、目標の達成状況に応じて弾力的に見直す必要がある。

 JAの経営環境が令和時代に入り急速に厳しくなる中では、財務目標の達成にこだわる経営管理が必要になる。今回の取り組みの紹介を通じて各JAが目標利益の達成に向けた計画策定・PDCAの実践に取り組んでいただきたい。

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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March 09, 2020 at 01:12PM
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