OAに引っ張られるだけではだめ
3日のA代表との試合はボランチで、そして5日のU-24ガーナ代表戦は左サイドバックとして、中山はピッチに立った。ガーナ戦がオーバーエイジ(OA)の3人を組み込んだ陣容であったことを考えれば、本大会も左サイドバックとしてプレーする可能性は高い。 6日の練習後、中山は押しも押されもせぬA代表の右サイドバックで、U-24代表にOAとして加わった酒井宏樹に教えを乞うた。「ガーナ戦の反省ももちろんですけど、どちらかと言うと、今後につながる、僕の成長を促してもらえるようなアイディアを。単純に言えば、レッスンを受けていました」。自ら話しかけて、貴重なアドバイスをもらったという。 「動き方であったり、意識であったり、僕自身はキャリアの中でサイドバックはそれほど多くの試合をしていないポジション。幸い、お手本になるような選手がいているので、昨日だけじゃないですけど、そういったものを話していました」 かつてはボランチへのこだわりを口にしていたが、「大前提は試合に出ること」と本人は語る。求められれば「FWでもやる」覚悟がある。 時にその万能性はチームを補完する上で重要な武器になるが、ポジションをこなすことに重きを置き過ぎると、器用貧乏の域を出ず、凡庸なプレーに終始する選手となる危険性をはらむ。しかし中山は「僕自身、どこのポジションなのか、いまだに探っている状態です。逆に言えば、そこが強み。それ自体を楽しんでいる状況です」と現状を前向きにとらえていた。「どこのポジションを任されても、いつも高いレベルでプレーするということが求められていると思いますし、簡単じゃないですけど、そこは楽しめている部分です」とポジティブにサイドバックとしてのプレーレベル向上に取り組んでいる。 ガーナ戦の最終ラインは右から酒井、吉田麻也、冨安健洋、そして中山だった。A代表でも組んだことのある4バックがU-24に移植された形。その中で中山は安定感をもたらす守備の役割をしっかりと担った。試合後、攻撃陣が口々に守備陣の安定したプレーを称えたが、その堅さは本大会に向けて大きなプラス材料になった。その一方で、攻撃はやや右偏重となり、後半になって中山のクロスから上田綺世がネットを揺らしたものの、物足りなさも残った。ただその点についても中山には考えがあった。 「まず意識しているのは、守備の部分。そこが大前提。もっと攻撃を増やせればいいですが、その割合だったり、サポートの仕方というのは状況に応じて変えなければいけないなと。ガーナ戦は、どちらかと言えば右サイドがガンガン行けていたので、バランスを見て、相手の残りの枚数であったり、選手の特徴であったりで割合を考えているところです。そこが突き詰められると攻撃に行くべきか行かないべきか、もっともっと研ぎ澄まされていくと思います」 ここまでの起用のされ方を見る限り、中山は左サイドバックとして他の選手をリードしている感がある。ボランチやCBでプレーできる万能性を備えつつ、本大会ではまでに左サイドバックとして「研ぎ澄ます」ことが重要だろう。本人もその点は重々承知していた。その上で、チームとしても、自立することを求めていた。 「ガーナ戦では、OAの3人が僕たちを彼らのレベルまでに引き上げるようなアクションをしてくれたと思います。僕らもそれに応じて試合の中でも、突き詰めなければいけない部分がはっきりしていた。それがまた次戦につながる。そういう意味で、日ごろからチームにとって多くのものを還元してもらっているので、僕たちは今はそれに応えている状態ですけど、いずれはそれが自然になって、チーム全体としてそういう雰囲気がしっかりと流れるようになればと思います」 OAに引っ張られるだけではなく、U-24世代の選手もOAとともに階段を登っていく。そんなチームになりたいと中山は言う。少なくともガーナ戦で、その可能性は示された。中山には左サイドバックとして、さらにこのチームで中心的な役割を担うことが期待されている。
サッカーマガジンWeb編集部
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