ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山/月山 もも 著
人間には二つのタイプがある。一人でする外食や旅を心から楽しめるか、そうでないかだ。本書は前者に憧れつつも、寂しさと居心地の悪さを心配して行動に移せない人に向けた実践的なエッセー集。著者が全国各地のお気に入りの店や宿を挙げながら、快適な過ごし方を指南してくれる。
山形県庄内地方の出身で、東京に暮らす会社員である「女一人旅ブロガー」の著者は、子どもの頃から人付き合いが苦手だった。高校時代に鶴岡駅前の喫茶店「コフィア」に単独入店した時から、一人の時間に価値を置く歴史が始まっていた。
洋食店、クラブ、そば店、居酒屋、うなぎ店、フレンチレストランで「ひとり酒」の経験値を高めた。初心者には「さまざまなチェーン、さまざまな店舗」での「ひとりお茶」から試すことを勧める。
本文中にある通り、世界はまだまだ「誰かと一緒に楽しみたい」人を中心にできている。それでも探せば「一人旅に優しい宿」は見つかる。「ひとり温泉」を満喫する旅はやがて登山に発展する。必要な装備をそろえ、低山ハイキングから北アルプス縦走まで、段階的にステップアップした。
一人は時に不便で危険も伴う。けれどもメリットはそれらを補って余りある。平日の仕事は自分だけの頑張りではままならないことが多い。自ら計画し、遂行する週末の旅は、仕事では得られない深い達成感と満足感をもたらす。明日を生きる力になる。
最終章は「あえて『旅人』として故郷を歩いてみる」と題した庄内の旅の記録。月山登山に鶴岡のレストラン「ファリナモーレ」、酒田のすし店「こい勢」などを堪能する。著者にとってかつて「何もないつまらない所」としか思えなかった故郷は、限りない魅力にあふれた土地だった。(ぐ)
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KADOKAWA(0570)002301=1540円。
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