「何のためらいもなく自信を持って振り抜けた」
まさに閃光の左足だった。小泉佳穂が11分に決めた浦和レッズの先制点。J1初ゴールは強烈なミドルシュートからだった。 右サイドの西大伍が内側に強いパスを送ると、田中達也はスルーして前に走って相手を惑わせた。ボールの先には小泉。DFラインと平行に中に持ち出し、前寛之のスライディングを見切って軽くかわすと、ゴールまでおよそ20メートルの距離から左足を鋭く振り抜いた。次の瞬間、ゴール右に突き刺さる完璧なゴールが生まれた。 「どこまで言っていいのかわからない部分があるんですけど」 小泉はそう話し始めて、チームできっちり練り込んだ戦略的なゴールだったことを匂わせる。 「西(大伍)選手があの位置で持って田中(達也)選手がいい形でマークを引き連れて抜けてくれて、いい位置で自分が受けることができました。その2人と自分の意志の、一瞬の判断の共有ができて、相手に後手を踏ませることができました」 あとは、しっかり打ち込むだけだった。 「どちらの足でも蹴ることができるのが自分の大きな強みなので、あのシーンも何のためらいもなく自信を持って振り抜けたと思います」 だから、あれほどまでにボールにパワーが乗ったのだろう。 「あのゴールは文句なしですね」 攻撃で出色のプレーはほかにいくつもあったが、触れておくべきは守備の貢献だろう。1-0で折り返した後半は、アビスパ福岡が開始からぐぐっと攻撃に圧力をかけてくる。ロングボールを巧みに利用してきたからこちらの重心は下がってしまう。その嫌な流れを断ち切ったのが、小泉の守備だった。 76分、相手陣内に押し込んでからセカンドボールにぐっと腰を入れて奪い切ると、汰木康也に預けた。汰木のカットインからのシュートはブロックされたが左CKに。これを汰木がニアに送り込んで、明本考浩がヘッドできれいに流し込む追加点が生まれたのだった。 ボールを失わないテクニックで時間を作り、仲間を走らせる巧みなパスでチャンスに導き、自らもゴールを決めて、守備でもチームを勝たせる。まさに誇るべき「王様」のプレーだった。 「いろいろなパターンがありますけど、相手に応じて臨機応変にどういう形を使うのか、全員が意志を共有してボールを動かせているので、僕もそれに合わせて動くとうまくもらえます」 絶対君主としての王ではなく、仲間とともに最高のチームを作る賢いリーダーとしてのキング。 「いい状態でボールが入ってもつぶされたシーンがあるし、ラストパスの精度を欠いて得点につなげられないシーンもありました。まだまだ事実として課題はあります」 浦和のフットボールをコントロールする充実のプレーぶりにも、この新しい王様はまだまだ納得がいかないようだ。 取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE
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