株価の過去最高値更新が続くのはアメリカばかりではありません。ベトナムの代表的な株価指数VNは4月に入り、歴史的な高水準に切り上げています。国内経済は依然として好調で、コロナ禍の打撃を克服しつつあることが背景にあるようです。
VN指数は昨年から心理的節目となっていた1200ptを上抜けた後も上昇基調を維持し、足元は1300ptを目指す展開です。国際通貨基金(IMF)は直近の世界経済見通しで、ベトナムの2021年の国内総生産(GDP)成長率を+6.5%とし、成長が加速すると予想。先行きに楽観的な見方が広がるなか、主力の金融や不動産を中心に買いを集め、強気相場を形成しています。
ベトナムは新型コロナウイルスの感染抑止で成果を上げ、経済は昨年後半からすでに回復軌道に乗っていました。株価もそれに応じて騰勢を強め、年明けに1200ptが視野に入ります。ところが、1月半ばに急反落すると一気に弱気相場へ転じ、ほぼ連日の大幅安となりました。振り返ると、その調整が足元の強気相場につながったと言えます。
ベトナム政府が2015年に外国人による株式投資の規制を見直すと、株価は2016年以降ほぼ右肩上がりを描いていました。これまでドイツや日本などが進めてきた政府系企業の民営化に倣い、ベトナムは国営企業の株式を今後数年間で大量に放出する方針です。そのため、株式市場の規模拡大に合わせ、株式投資ブームは今後確実に訪れるとの見方が広がっています。
政府による株式市場のテコ入れや株価の最高値更新が重なり、ベトナムでは現在、証券会社への新規口座開設が急増しています。ベトナム証券保管機関(VSD)によると、3月は11万4000件で、過去最高を記録しました。1-3月期の3カ月間では25万8,000件に上り、すでに2020年全体の6割程度に達しています。このペースが続けば、開設数は昨年の2倍以上になります。
ただ、顕著な成長をみせるベトナム市場も、一段の国際化に向け克服しなければならない課題があります。取引量が膨らむとシステム障害により売り買いの注文が停止されるケースが複数回あり、その都度警戒感が広がっています。指数の上昇は続くものの、投資家が慎重になるのは相場の動向のほか、そうした技術面でのリスクを抱えているためだとみられます。
一方、対中関係も大きなリスクになりえます。ベトナムと中国は南シナ海における領有権問題で争い、米バイデン政権は発足当初からこの問題で中国を非難しています。アメリカは人権問題からのアプローチで中国の封じ込めを進め、最近は日豪印の3カ国とともに連携の強化を打ち出しました。こうした米中対立の激化には隣国のベトナムも無関係ではいられません。
バイデン政権初の為替報告書でアメリカはベトナムの「操作国」指定を見送り、対中包囲網に取り込もうとしています。国家主席に就任した前首相のフック氏の外交手腕も、株価の大きな変動要因となりそうです。
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
(吉池 威)
《YN》
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