Wednesday, April 28, 2021

GWは旅行禁止? ジムも休館? よろしい、ならばZwiftだ - ITmedia

terasibon.blogspot.com

 戒厳令、もとい、緊急事態宣言が東京都に出たこともあり、住んでいる東京から外に出るわけにいかなくなった。まあ、この1年は電車やバスで移動するのは片手で数えるくらいしかなかったし、もともと引きこもり体質なので影響はほとんどないのだが、せっかくの大型連休に全く移動ができないとなると、やはり閉塞感が高まる。窮屈だ。そんなとき、ある方からローラー台をいただいた。

photo 譲っていただいたローラー台「Elite Volano」

 ローラー台というのは、自転車(主にロードバイク)の室内トレーニングをするための補助機器だ。安価なものは1万円くらいから高価なものは10万円を超えるものまである。機能に応じて方式もさまざまだ。

 ロードバイクなどの多段ギアを装備している自転車では、ギアを変えることで1回のペダルの回転で移動する距離と、それに応じて負荷が変わる。この負荷と走行感を、できるだけ本物に近づけるための装置が、ローラー台だ。

 最初から一体化したものもあるが、それはスピンバイクなどと呼ばれる。スポーツジムなどに置かれているものだ。ディスプレイが付いていて、何かの番組を見たり、自分のスピードや消費カロリーを眺めたりしながらペダルを回す。その機能を簡略化したものも家庭用に売られている。

 ローラー台はもともと、目の前には何もない状態でひたすらペダルを回すストイックなものだったが、最近ではコンピュータに接続することで、漕いでいる情報をリアルタイムで映像に反映させることが可能になった。ロードバイクを漕いでいる自分のアバターが、実際に自分が漕いでいるスピード、負荷に合わせて画面の中を疾走する。かつては高度な技術・装置を必要としていたものが、今ならある程度の知識と、比較的安価に用意できる機器でスタートできる。そのための基本的な装置をいただいたのである。

 これはやらねばなるまい。どうせ旅行はできないし、ロードバイクでも遠出は批判を浴びるかもしれない。多くのジムは閉鎖している。

 数年前から気になっていているトレーニングサービスで、「Zwift」というものがある。全世界中のユーザーが、常時数千人から1万人以上同時にアクセスし、さまざまなコースを走り、競い合っている。

 ぼくはロードバイクで走るとき、「Strava」というトレーニングサービスとサイコン(サイクルコンピュータ)のGPS、スピード、ケイデンス(ペダルの回転速度)のデータを連動させて記録している。そのStravaでフォローしているロードバイカーが、ニューヨークやらパリやらを走っているという投稿が通知されてくるのを見て不思議に思っていた。Watopiaという知らない土地を走っている記録もある。

 その画像に「バーチャル」とあり、その投稿はZwiftというサービスと連動しているものだということが分かった。WatopiaはZwiftオリジナルの、リアルには存在しないコース。漕いで発生させるパワーがワット(Watt)だからWatopiaというわけだ。

 この人は室内でローラー台とロードバイクを接続し、PCに接続してバーチャルサイクリングをしているのだ。自分もやってみようと、10数年前にもらって一度も使っていなかったMinouraのタイヤ式ローラー台を自分のロードにつなごうとやってみたのだが、このローラー台には必要なセンサーが付いておらず、なかなかうまくいかないまま数年間放置していた。

 ところが、今度いただいたローラー台「Elite Volano」はちゃんとZwiftに対応したモデルで、後輪を外して、チェーンをElite Volanoのスプロケットに巻き替えて回す、ダイレクトドライブ方式。実売で5万円くらい。この方式は静粛性も高いらしい。譲ってくださった方は、もっと高性能で、リアルな走行感が得られるさらに高価なローラー台を使っているのだという。

 しかも、自分が使っている「Cinelli Proxima」という、2007年に友人から中古で譲ってもらったロードバイクのコンポーネントであるShimano 105(だいぶ旧式)に最初から合わせていただいていた。自分で買おうと思っていたとき、その設定が大変そうで怖気付いていたのだが、そこをスキップできたおかげで設定は楽だった。

 ケイデンスセンサーは、もともとCinelli Proximaに付けていた「Wahoo Blue SC」というBluetoothセンサーがそのまま使えた。さらに心拍計も連動する。これはApple Watchが使えることが分かった。スピードとパワーはElite Volanoが送出する。

photo Apple Watchを含む3つのセンサーをZwiftに接続する

 これらをWindows PC、Mac、iPhone、iPad、AndroidのZwiftアプリにワイヤレス接続すると、自分のアバターが走り出すのだ。自分の場合には、MacBook Airに22インチの外部ディスプレイをつなげ、目の前に置いている。ハンドルの上には、サブモニターとしてiPhoneも置いている。「Zwift Companion」というiOSアプリで、別視点から地図を確認したり、さまざまな操作を行ったりできる。

photo Zwiftの表示はMacBook Airから外部ディスプレイに

 セッティングさえできればしめたもの。サドルにまたがり、MacをオンにしてZwiftアプリを起動すれば、一緒に走る誰かが常にいる。ちょっと前を走っている人がいれば、システムが「距離を縮めろ」と言ってくるのでペダルの回転を上げる。5分もすれば体が暖まり、10分を過ぎるとじわりと汗が出始める。ところどころカーブや坂道があるが、このローラー台はそこまでリアルに再現することはできない。さらに本物っぽくトレーニングしたいという欲求が出てきたら、坂道や路面の変化に追従する自動負荷対応スマートトレーナーという次の沼にようこそ、となるのだろう。

photo こんなふうに分析されてしまう

 そんな感じで、ここ1週間くらい、毎日いろんなところを走っている。パリ、ロンドン、ニューヨーク、ヨークシャー、インスブルック(どこすかそこ)……。ロードの走行音と、山道であれば鳥のさえずりすら聞こえてくる。聞いたことのない鳴き声が異国を走っている気にさせる。

photo インスブルックというのは、オーストリアの古都らしい

 普段は10分くらいのライドを何回かに分けてやっている。仕事を始める前、仕事が煮詰まったとき、夜寝る前に、など、隙間時間がそのまま運動になるし、目の前にはMacBookもあるので、原稿を書いたり編集したりしながら異国を走るのも、理論上は可能だ(やっているとは言ってない)。

 サブモニターでZwiftを確認しながら、大型ディスプレイでドラマやアニメを見ながら走るというのもいいかもしれない。短時間でもスパッと切り上げられるのも仮想ライドのいいところだ。実際に外で走ると、帰宅するときのことまで考えなければならない。100km走ろうとするなら、50kmくらいで折り返す必要がある。だが、仮想ライドの場合にはその心配は不要だ。

 自転車走行時は、車を運転しているときと違い、イヤフォンなどで音楽を聴きながら走ることはできないし、そもそも危険だ。だが、Zwiftなどの仮想サイクリング中は安全にできる。好きな音楽でもポッドキャストでも流しながら、あるいは仲間と音声チャットしながら走るというのもいい。そういえば、Zwiftをやる話になったのは、自分が参加しているポッドキャスト番組に、ロードバイク乗りのYouTuber、あむちゃんが出演して話をしてくれたからだ。

 Zwiftを使い始めて数日後、以前から自分が所属するSNSで活動しているZwifterたちとパリをグループライドしたのだが、これが何とも素晴らしい体験だった。そのグループライドで無料体験距離を消化し、すぐにサブスクリプションすると決めた。月額1600円。使えば使うだけお得感が出てくる気がする。

 そんな感じでスーツケースの渡り鳥のように世界各地を転戦しているわけだが、人はぜいたくなもので、このCinelliはZwift専用にして、ロードは別に買うか、と思い立ち、中古ロードを買ってしまった。FELT製の、自分にとって初めてのカーボンロードだが、10年落ちということもあり、当時の半額以下で購入。リアルなロードで近場を走り始めている。今のように気候がいい季節はこれで外も走りつつ、梅雨とか嵐とか酷暑とかになったらZwiftで、家の中にいながら世界を走り回りたい。

photo 7月に行われるツール・ド・フランスのコースを一緒に走ることも可能だ

 バーチャルサイクリングはZwiftに限らない。CGではなく実際にユーザーが撮影した車載映像を見ながらそのコースを走れるサービスもある。グループライドがあるのでZwiftは当分続けるつもりだが、それ以外の仮想自転車旅行も試してみたい。


 妻は2006年ごろ、自宅のスピンバイクを漕ぎながら、世界各地のいろいろなところを想像しながら旅をするというブログを書いていた。ビリー・ジョエルが「Movin' Out」という曲の中で歌っていたハッケンサックという街にニューヨークから向かう旅を、スピンバイクで飛ばしながら、その感想を想像力と計算で記していた。先見の明があったのだ。

 リアルな自転車旅行を一緒にすることは二度とできなくなってしまったけれど、想い出の仮想自車旅はいつか走ろうと考えている。一緒に行くはずだったニューヨーク、新婚旅行と10年後の家族旅行で行ったビートルズの生誕地リバプール。結婚20年目でレンタル自転車で一緒に走った飛鳥・斑鳩。妻の愛車だったBianchiのクロスバイクで、ぼくの横を走ってくれるといいなあ。ガチトレーニング系じゃない、そんなロマンティックな仮想ライドはないですかね。

 あ、幸いなことに自転車をもう1台横に置くスペースはあるので、等身大の妻のフィギュアを3Dプリンタで出力して、一緒に走るというのでもいいか。横を向けばそこにいる、という。むしろそちらの方が現実的な気がする。ゴールデンウイークにやることがもう一つ、生まれてしまった。まあ、そういうことも可能なのだ。家の中でのことなので。

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