双方が譲歩しながら妥結に至るのが外交交渉の常道であるなら、北方領土問題の解決は絶望的というほかはない。 外務省がことしの「外交青書」で、これらの島々について「日本が主権を有する」との記述を盛り込んだことに、ロシアが強く反発した。日本側は島の範囲に触れるのを避ける配慮をしているにもかかわらずだ。 日本政府は一昨年に打ち出した「2島返還」という方針をいまだに維持しているようだが、ロシアの不誠実な態度があらためて明らかになった以上、いよいよ本来の方針に立ち返るべき時が来たというべきだろう。
青書「4島」明記せず
「両国間に好ましい雰囲気を醸成するという首脳レベルの合意に反する」(ロシア外務省のザハロワ報道官、5月21日)というのがロシアの言い分だ。「第2次大戦の結果、(北方領土は)ロシアの主権を有した」と従来の不当な見解も繰り返した(5月22日、読売新聞夕刊)。 「外交青書」での「日本に主権がある」という記述は、日本として当然の主張だが、昨年の白書に比べて、踏み込んだ表現になったことから先方が反発したらしい。 2019年版の青書では、領土に関する日本の法的立場については何ら言及されず、「日露間で平和条約が締結されていない状態は異常である……」というお題目にとどまっていた。 2018年版は、「北方4島は日本に帰属する」とわが国の原則的立場を明記しており、これに比べれば大きな後退だった。自民党内やメディアなどから批判を浴びたこともあって、ことし、あらためて「日本が主権」という表現を盛り込んだ。 しかし、「日本が主権を有する島々」にしても、それがどこをさすのか不明確で、主権が存在するのが4島(「国後」「択捉」「歯舞」「色丹」)であることは明記されていない。 ロシア側に配慮し、日本政府がなお固執する歯舞群島、色丹島の2島返還実現の可能性を残す意図だろう。 ロシア側はそれにすら異議を唱えるというのだから、もう何をかいわんやだ。 筆者は過去、当サイトで「2島返還」は日本の主権放棄であり、国家の基本を揺るがす愚策であること、ロシアがそれに応じてくる可能性が少ないことを、たびたび指摘してきた。今回のロシア側の反応はそれをあらためて裏付けるものとみてさしつかえあるまい。 茂木外相は5月22日の記者会見で、ことし記述を変更したことと、ザハロワ発言について聞かれ「国際的な発言にコメントするのは避けたい。1956年の日ソ共同宣言を踏まえて平和条約交渉を加速させることで首脳が合意している。(日露間に)齟齬はない」と説明した。ロシアの不誠実な姿勢にもかかわらず、政府の方針に変化はないということだろう。
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June 01, 2020 at 10:22AM
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ロシア、北方領土でまたいいがかり、「2島返還」の″妖怪″と決別の時だ(Wedge) - Yahoo!ニュース
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