ベルリンにはクラブやフェスティバル、文化イベントの主催者ら約250人の会員を擁する、「ClubCommission Berlin」という地域団体がある。彼らは新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でベルリンのクラブやライヴミュージックヴェニューが閉鎖を余儀なくされた3月中旬に、意思決定のスピード感でドネーション型ストリーミングプラットホーム「United We Stream」を始動した。
このプラットフォームでは、トレゾア(Tresor)やウォーターゲート(Watergate)、ホッペトッセ(Hoppetosse)、アバウトブランク(://about blank)をはじめとするベルリンのクラブが参加していたが、現在は世界中の43都市、111のヴェニューで展開されている。
寄付金は5月上旬の時点で約450,000ユーロ(約5千270万円)が集まっており、番組をホストしたオーガナイザーや出演アーティストへのギャランティーは、ホスティングプールの20%の中から各クラブの判断により支払われる仕組みだ。
ClubCommissionがこうした規模の取り組みを即座に実現させることができたのは、ベルリンのクラブ業界の内外で広域にわたるネットワークと信頼関係を構築してきたからだろう。彼らの活動の中心はベルリンのクラブカルチャーの促進と保護であり、コミュニティーやカルチャーが生み出される現場と、行政や企業との間に立ち、仲介役を務めるのがその主な役割だ。
今回、取材を受けてくれたのは、ClubCommissionの役員兼スポークスマンを務めているルッツ・ライシェンリング(Lutz Leichsenring)。
近年ベルリンで顕著に見られるジェントリフィケーションからクリエイティブなスペースを守るための活動に取り組んでいるほか、アムステルダムの元ナイトメイヤーのミリク・ミラン(Mirik Milan)とともに、都市のミュージックヴェニューを調査するプロジェクトCreative Footprintを立ち上げ、実施していることでも知られる。
ベルリンのナイトシーンに関する政府からの支援状況
前述のUnited We Streamに集まった多額の寄付金に対し、クラブが存続していくにはそれでもあと毎月1千万ユーロが必要だとルッツは言及するが、政府からの支援のおかげで、今のところ多くのクラブが持ちこたえられているという。企業や個人事業主、フリーランスに向けた政府からの支援状況について、ルッツは、ベルリン市は連邦政府と協力し、クラブシーンを応援する4つの対策を現在発表しているという。
1. 短時間労働
短時間労働とは、労働時間の一時的な削減で、それに応じて給料も減少する。短時間労働ゼロは、仕事が完全に停止することを意味する。目的は、仕事を維持しながら人件費を削減することにより、会社の財政的負担を一時的に軽減することだ。従業員が失った給料は通常(部分的に)、職業案内所からの短時間労働補償によって補填される。
2.最大500億ユーロの緊急援助
連邦政府は新型コロナウイルス流行により経済的に困窮する個人事業主(Solo-Selbständige)と小規模企業(kleine Unternehmen)に対し、連邦資金から合計で最大500億ユーロの緊急援助を決定。
申請者の経済的存在を確保し、深刻な流動性のボトルネックを解消するため、助成金という形で即時の財政支援を提供した。この資金は、家賃や事業所への融資、リース料などの運用コストの支払いに使用可能だ。
従業員5人以下の零細企業(Kleinstunternehmen)には、3カ月分で5000ユーロから9000ユーロの一時金を支給。従業員10人以下の企業は、3カ月分で1万5,000ユーロまでの一時金を受け取ることができる。
3. 流動性サポート
ドイツ復興金融公庫(Kreditanstalt für Wiederaufbau(KfW))は、企業への流動資金の短期供給を促進することで、コロナ危機に対処する企業を支援する。こうした目的のために、KfWは既存の融資制度を利用し、融資の条件を改善。企業、文化、クリエイティブ業界の個人事業主、およびフリーランサーも、これらの支援を利用することができるが、融資であり、助成金ではないことに注意が必要だ。
4. 民間文化事業者基金
ベルリン市は4月15日に、クラブ、劇場、映画館などの10人以上の従業員を擁する民間文化事業者向けに3000万ユーロの基金を発表した。
2020年夏のベルリンのクラブ、野外スペースの活性化案
ベルリンでは現在(5月22日)、ロックダウンから約9週間が経過し、徐々に規制が緩和されつつある。レストランやバー、フリーマーケットが再オープンする中、「クラブの再開は一番最後になるだろう」とルッツは述べるが、フードライセンスを持つクラブが屋外のスペースを利用し、ビアガーデンという形で再オープンに乗り出している動きもある。
このような中、ClubCommissionは現在、24時までオープンスペースを一般解放するよう政府に呼びかけている。音楽プログラムは22時で終了、10月15日(木)までの期間限定のこの提案は、少なくとも一部のクラブが、「カルチャーを渇望する客」に向けて野外で営業できることを可能にするもので、適当な場所を持たないヴェニューは道路や広場の特別使用許可を当局から取得することや、ブッキングはベルリン在住のアーティストが優先されることが、鼻口元のカバー、オンライン・チケットシステムの導入などと共に、規定の中に盛り込まれている。
ClubCommissionによると、ベルリンのクラブやイベント主催者には約9,000人の従業員が存在し、クラブシーンは近年で約14億8,000万ユーロの売上をベルリン経済にもたらしてきた。「『このままでは文化事業が経済的に成り立たない』ということを前提にしなければなりません。しかし、これらの措置を実施することで、いくつかのクラブは、小規模ではあるが、社会的役割を果たし、人々が望む文化プログラムと社会環境の一部を再び提供することができます」とルッツは説明する。
4月後半に立ち上がった「グローバルナイトライフ復興計画」
また、ルッツは、ミリクとともに運用するプロジェクトVibeLabを通して、4月下旬に「グローバルナイトライフ復興計画(Global Nighttime Recovery Plan)」を始動している。国境を超えて繋がるナイトシーンのグローバルネットワークを活かし、地域戦略や世界的なベストプラクティス、開発支援を求めてオンライン・カンファレンスを実施。以下の包括的なタイムラインをカバーした計画を作成していくという。
- 解決策:新型コロナウイルスの拡散を抑制のための緊急行動の分析
- 回復と復帰:復興を具現化するための手段と戦略
- 新たな想像と改革:これからの平常 (next normal) を定義するためのシナリオプランニング
各都市のナイトメイヤーや委員会、協会などから成るネットワークに、日本からは「Creative Footprint」の東京調査を請け負った、ナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA)が参加。発起人でもある梅澤高明が初回のオンライン・カンファレンスに参加した。
JNEAは、Creative Footprint Tokyoの調査結果を元に、音楽ヴェニュー緊急支援プロジェクトとして、政府などの各種支援策活用に関する相談窓口を設置し、行政に対してフリーランスの保護をするよう働きかけを実施している。
「世界のナイトシーンがともに協力することで、この苦難からの復興を成し遂げられるのではないか」とルッツは期待を語った。
テキスト:早川みどり
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