トレックス・セミコンダクターは2021年5月、入力範囲が1.3〜16Vと広く、パッケージサイズが1.8×2.0×0.6mmと小さい1Aドライバ内蔵同期整流昇圧DC/DCコンバーターIC「XC9143/XC9144シリーズ」を発売した。
昇圧DC/DCコンバーターは、小型ディスプレイや小型モーターの駆動系などに使用されることが多い。ただ昨今、製品化されている昇圧DC/DCコンバーターの多くは、1セルリチウムイオン電池による駆動を前提にし、入力電圧範囲が3〜5V前後に限られていた。「昇圧DC/DCコンバーターを必要にする用途では、1セルリチウムイオン電池以外にも乾電池2本を電源にしている機器や12V電源を使用する機器などさまざま。ただし、1セルリチウムイオン電池以外の電源に対応した昇圧DC/DCコンバーターの新製品はほとんどなく、10年以上前に開発された昇圧DC/DCコンバーターを使用せざるを得なかった。そこで、1セルリチウムイオン電池以外のさまざまな電源に対応しつつ、小型、高効率な新しい昇圧DC/DCコンバーターをコンセプトにXC9143/XC9144シリーズを開発した」(トレックス・セミコンダクター)とする。
同シリーズは、1.3〜16Vの入力範囲で乾電池2セルから12V系電源まで1つのICで対応。さらに、旧来の昇圧DC/DCコンバーターでは非同期整流方式が一般的だった中で、変換効率に優れる同期整流方式を採用した。同期整流方式は、整流スイッチが大きくなるという課題があるが、一般的なPチャンネル整流スイッチではなく、小さなサイズで済むNチャンネル整流スイッチを採用。「Nチャンネルのスイッチの場合、BST端子(ブースト用端子)を追加する必要があるが、6ピンの小型パッケージを採用するため、VIN/BAT端子を割り当てず、回路動作に必要な電源をVOUT端子から得る特殊な回路構成にして、使用するピン数を6ピンに抑えた」(同社)とする。
その結果、広い入力電圧範囲、高効率な同期整流方式ながら、1.8×2.0×0.6mmサイズの6ピンパッケージ(USP-6Cパッケージ)の小型昇圧DC/DCコンバーターを実現した。
XC9143/XC9144シリーズは、定電流での起動方式を採用した点も大きな特長。従来製品では、DC/DCコンバーターの起動時の突入電流を抑えるため、所定の起動時間で徐々に出力電圧を立ち上げていくソフトスタート機能を備えている場合が多かった。ただ、この方法では、負荷側の容量が増大した場合、入力電流が増大してしまい十分に突入電流を防ぐことが不可能で、別途対策が必要になった。これに対し、XC9143/XC9144シリーズは、一定の電流値で起動するため、負荷側の容量にかかわらず入力電流は一定に保つ。そのため、負荷側の容量が大きくなれば、それに応じて起動時間、出力電圧が一定値に達するまでの時間が延びる。ICが自動的にそれぞれの回路に応じたソフトスタート時間で起動する仕組みともいえる。なお、起動は、「DCDC起動モード」と、乾電池2本など低入力に対応するためDCDC起動モードより低い電流値で起動を開始する「低入力モード」の2モードある。
XC9143/XC9144シリーズには、PWM制御の「XC9143」とPWM/PFM切り替え制御の「XC9144」で構成され、いずれも発振周波数3MHz品と1.2MHz品がそろう。動作開始電圧は1.7Vで出力電圧範囲は7.0〜18.0V。消費電流は55μA。USP-6Cパッケージ品以外にも、TSOT-26品(2.8×2.9×1.3mmサイズ)もラインアップしている。サンプル価格は300円(税別)。
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