[ニューヨーク 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国内の老朽化したインフラは当然改修が不可欠とはいえ、バイデン大統領の念頭にある、そうしたインフラ施設全てが民間投資家にとって魅力を持つわけではない。例えば、水道整備はその必要性と社会にもたらす恩恵はとても大きいが、資金の出し手が受け取るリターンは高くないかもしれない。公益の面で望ましいことが常に民間の観点から投資可能とは限らないが、双方の折り合いをつける余地はある。
アメリカン・ソサエティ・オブ・シビル・エンジニアズは、米国内のインフラに「Cマイナス」という極めて低い評価を下している。満足がいく水準に点数を引き上げるには、2029年までに2兆6000億ドルもの新たな投資が必要になると見積もっている。
そうした投資を怠れば、交通の乱れや信頼できない電力システムなどにより、39年までに10兆ドルのコストが生じてしまう。これほど大きなニーズがあり、リターンが得られる可能性もあるのだから、認められるだけのものを議会からしぼり出し、最大限の投資を実行することは重要だ。
民間企業は、リターンがすぐに得られ、その見通しも比較的確実で採算性が高い事業案件には喜んで投資するかもしれない。ただ、他の分野に関しては、政府の介入が必要だ。その典型的な領域は基礎研究だが、給水施設の改修も該当する。
環境保護局(EPA)によると、米国では地方自治体が運営する水道システムが国民の84%に水を提供している。ところが、人体に害がある鉛製の給水管を撤去する作業だけでも、貧困地域では一時的な巨額費用を負担する余裕が地元にはない。
そこで、バイデン氏は主に環境保護局経由で、各州が管理する融資用資金に連邦政府が計450億ドルを投入することを計画している。資金はそこから各地域社会に貸し出され、数十年かけて返済してもらう。各州もある程度の資金を追加的に拠出すれば、十分な規模が確保されるはずだ。
こうした水道改良事業は、社会貢献度も大きい。非営利団体の環境防衛基金は、鉛製の給水管930万本を撤去すれば、心疾患の減少などにより2050億ドル相当の付加価値を生み出せると試算する。1本当たりの撤去費用を5000ドルと想定すれば、リターンは約4倍だ。その上、これは極めて控えめな見積もりでもある。
子どもの鉛毒被害と、教育水準や知能指数の低下、犯罪率上昇の間には確固とした因果関係が成り立っている。コロンビア大学のピーター・ミュニッヒ教授は、鉛毒がもたらす社会的コストが現時点で子ども1人当たり5万ドルと推計する。
鉛製給水管の撤去は多額の資金がかかり、所有者たちが独力で進めることはできないかもしれない。メリットが完全に顕在化するには何十年もかかり、効果も社会全体に散らばる形になる。
だが、そうした点にこそ、政府が介入してこれらのプロジェクトを最優先事項に近い政策に位置づけるべき理由がある。バイデン氏がまず取り組まなければならないのは、民間投資家が敬遠しても必要価値の高いインフラの整備計画をあぶり出し、どんな形であっても確実に実行できるようにすることだ。
●背景となるニュース
*グランホルム米エネルギー長官は4日、バイデン大統領が発表した2兆ドルのインフラ投資計画について、超党派の合意を得ることができない場合、共和党の支持なしで法案成立を目指す意向だとの見方を示した。
*バイデン氏は、交通や上水管設備、送電網などの整備に多額の資金を投じるとともに、研究開発投資の引き上げなどを提案している。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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