
『沖縄芸能のダイナミズム 創造・表象・越境』久万田晋 三島わかな編 七月社・3080円
モノとしてしっかりと残る美術品や建造物とは違い、音楽や芸能は上演されるや否や、その場かぎりで消えてなくなる。同じことを再現しようとしても、何らかの変化はどうしても避けられない。こうした不安定性は、音楽や芸能がもつネガティブな側面のように思えるかもしれないが、当事者であるパフォーマーたちや、それを受け取る私たちも、実はそれほど気にかけていない。
編者の久万田が「文化とは第一義的には今を生きる人々の心の中にあるものであり、日々生み出されるものである」と述べるように、良くも悪くも流動的であることこそが芸能の本質なのである。私たちが老舗の銘菓を食べているのは、「百年前の味を追体験したいから」ではなく、単純に「今、おいしいから」のはずだ。
本書は沖縄にみられる多様な芸能―八重山の祝宴、組踊、エイサー、ハワイの盆踊り、三線など―を「沖縄芸能」と総称して、激動の20世紀以降、それらに生じた変化や変容について論じている。執筆者である七人の研究者が共有しているのは、時間、あるいは空間を超えたことによって生じた変容を、否定的に捉えるのではなく、冷静に観察し、そのダイナミズムを分析しようとする姿勢である。
もちろん、どの時代にも人々は西へ東へと往来し、それに応じて、芸能も変容してきた。しかし、20世紀における交通網の広がり、情報通信技術や複製技術の発達が、圧倒的かつ未曽有のものであったことは間違いない。とりわけ、移民やラジオによる他者との接触が、沖縄の自己像の形成に大きな役割を果たしたことがよく分かる。ひょっとしたらラジオの登場は、現在のインターネットよりも大きなインパクトがあったのかもしれない。
モノとして残りにくい芸能の文化変容を対象にした本書だが、だからこそ、最終章の「三線に積み重なる価値と人間関係」は、人から人へと継承される過程で、記憶や思い(価値)が付与される三線というモノに、あえて注目している点で、ひときわ異彩を放っている。
(奥中康人・静岡文化芸術大学教授)
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くまだ・すすむ 沖縄県立芸大付属研究所教授。民族音楽学、民俗芸能論。
みしま・わかな 沖縄県立芸大付属研究所共同研究員、同大学音楽学部講師。音楽学、洋楽受容史。
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June 07, 2020 at 01:53PM
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『沖縄芸能のダイナミズム 創造・表象・越境』 芸能の変容、冷静に分析 - 琉球新報
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