Monday, May 10, 2021

浜岡原発は今①住民避難 計画必要、施設「知らず…」 医療や介護、県の周知後手に【東日本大震災10年しずおか⑭ 第4章】|あなたの静岡新聞 - @S[アットエス] by 静岡新聞

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 「避難計画を作る必要があるとは知らなかった」。牧之原市細江の介護老人保健施設あじさい。新型コロナ感染症対策としてテーブルに取り付けたパネル越しに事務責任者の八木良弘(58)が戸惑いの表情を浮かべた。

浜岡原発から31キロ圏に入る介護老人保健施設のあじさい。県マニュアルが未整備で避難計画が策定できていない=4月下旬、牧之原市細江
浜岡原発から31キロ圏に入る介護老人保健施設のあじさい。県マニュアルが未整備で避難計画が策定できていない=4月下旬、牧之原市細江

 同施設は中部電力浜岡原発(御前崎市)から北東に約17キロ。県が原発事故を想定し、地域防災計画で計画策定を求める半径31キロ圏に入る。ただ、そもそも県自身が、避難計画の基準になるマニュアルを整備していない。原子力安全対策課長の神村典浩は「計画策定の必要性もまだ十分周知できていない」と率直に認める。
 県はこの10年、原子力防災に関して31キロ圏11市町の広域避難計画づくりに追われてきた。93万人の人口を抱え県外避難先の自治体も多い。調整に時間を要し、医療施設などの計画策定にまで手が回らないのが実情だ。
 御前崎市立御前崎病院は、2019年に県の協力を得て避難計画を策定したが、課題もある。入院患者らは浜松市内の医療機関に避難する想定だが、市の広域避難計画では複合災害の場合、一般住民は長野県に行く。家族に入院患者がいれば避難先が分かれる。事務長の村松光浩(59)は「今後検討が必要」と吐露する。
 本紙が11市町の首長に実施したアンケートでは、広域避難計画の実効性について、計画を策定した9市町のうち8市町が「課題が多い」「やや課題がある」と答えた。牧之原市は病院、社会福祉施設の避難計画の未策定や津波被災者の避難方法など15項目にわたる問題を列記した。
 避難計画の欠陥を理由に、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の運転を認めない判決も3月に出た。住民避難を巡っては、今なお膨大な課題が横たわっている。
 (文中敬称略)

 ■原発頼らぬ電源手段を 周辺首長
 国は、2050年の二酸化炭素排出ゼロを目指し、原発を活用する方針を打ち出している。脱炭素社会の実現と浜岡原発の活用に関する見解を聞いたところ、藤枝市の北村正平市長は、東日本大震災直後に当時の菅直人首相が停止要請をした浜岡原発の特殊性や31キロ圏内の人口(約93万人)の多さを理由に、「市民の理解が得られない限り再稼働は不可能」と明言した。
 袋井市の大場規之市長は、脱炭素社会の実現にはさまざまな電源を効率よく組み合わせる必要があることは認めつつ、「将来的には原発に頼らない電源手段を確立すべき」との見方を示した。

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 政府の要請で中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)が全炉停止し14日で10年を迎える。10年の歳月は地元住民や中部電力、立地自治体の同市にどんな変化をもたらしたのか。原子力防災は進んだのか。それぞれの視点で浜岡原発の「今」に迫り、今後の展望を考える。

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