東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、石巻市の住民が28日、東北電の再稼働の差し止めを求める訴えを仙台地裁に起こした。重大事故を想定した広域避難計画の実効性を問う。弁護団によると、避難計画に絞った差し止め訴訟は全国で初めて。
原告は原発から16~25キロの緊急防護措置区域(UPZ)に住む男女17人。
訴えによると、住民らは「女川地域原子力防災協議会は避難計画の実効性を調査、確認していない」と主張し、「交通渋滞で30キロ圏内を脱出できない」「病院や高齢者・障害者施設の入院患者や入所者は避難困難」と計画の問題点を列挙。計画の実行可能性や実施体制を疑問視し「住民らの生命や身体を侵害する具体的危険性がある」と訴えた。
提訴後、市内で記者会見した原告側弁護団の小野寺信一弁護士(仙台弁護士会)は「実効性のない計画が第三者の審議を受けないままで再稼働に突き進むのは危険。裁判所の審議を受けてほしい」と話した。
原告らは2019年11月、再稼働の事実上の前提となる県と市の地元同意の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申請。地裁は20年7月に申し立てを却下した。仙台高裁は同10月、地元同意と再稼働による人格権の侵害に直接的な関係は認められないとして、即時抗告を棄却した。
女川原発は東日本大震災以降、全3基が停止。2号機は20年2月に原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に合格した。村井嘉浩知事らは同11月、再稼働への同意を表明。東北電は安全対策工事を終える22年度以降の再稼働を目指す。
東北電は取材に「訴状が届いておらず詳細を承知していないため、コメントは差し控える。訴状が届き次第、内容を確認して適切に対処したい」と答えた。
[広域避難計画]東京電力福島第1原発事故を受けて、国が原発から半径30キロ圏内の自治体に策定を義務付けた。重大事故時の30キロ圏外の避難先や経路などを定める。石巻市を含む女川原発周辺の7市町は2017年3月までに計画を策定。住民約20万人が自家用車やバスなどで県内31市町村に避難する。計画は内閣府や県などで作る「女川地域原子力防災協議会」が確認し、昨年6月に政府の原子力防災会議で了承された。
避難計画20万人が31市町村へ バス確保や複合災害、課題山積
石巻市民が28日、仙台地裁に提起した東北電力女川原発2号機の再稼働差し止め訴訟は、重大事故時の広域避難計画の実効性が大きな焦点だ。計画では、半径30キロ圏の石巻市など7市町の19万8946人が宮城県内31市町村に移動する。渋滞対策、高齢者用バスの確保、東日本大震災のような複合災害への対応など課題は多岐にわたり、自治体は精度を高める見直しを進める。
計画では原発5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)の石巻市と女川町、「準PAZ」の牡鹿半島南部と離島の住民が即時避難する。5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の石巻、登米、東松島、女川、涌谷、美里、南三陸各市町の住民はいったん屋内に退避し、空間放射線量率に応じて避難を始める。
区域ごとの人口や避難先は表の通り。
石巻市では、3区域の計14万3701人が27市町村に分散避難する。牡鹿半島北側を通る主要避難路の国道398号は、地震や水害による寸断の懸念が住民から消えない。準PAZは陸路も海路も原発に近づく形で避難せざるを得ず、空路や屋内退避も想定する。
UPZでは避難経路を複数設けたが、東松島市では大半が国道45号を通る。渋滞が予想される区間では、自治体と県警が連携し、交差点での交通誘導などの対策に取り組む。
自然災害などで避難先の受け入れが難しい場合、県と自治体はUPZ外の県内の施設を新たな避難先として調整する。国や東北各県と県外避難も検討する。東松島市は東根市、美里町は山形県最上地方への広域避難を独自に計画する。
UPZでは当初、屋内退避を求めるが、住民が自主的に避難を始める可能性がある。宮城県の試算では住民が一気に移動した場合、PAZ、UPZの住民とも30キロ圏外の避難先に到着するまで最長3日弱かかる。現状の渋滞対策では5日以上を要する恐れもある。
計画は2020年6月の改定で、新型コロナウイルスなどの感染症対策が盛り込まれた。感染者と非感染者で避難車両や避難所を別にし密集の回避を求める。
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