先週、新しい食料・農業・農村基本計画が閣議決定された。1999年の基本法制定以来5回目となる基本計画だ。昨年の政治日程の関係上、諮問から答申までの期間が例年になく短く、また、新型コロナ騒動の下での難しい取りまとめとなったが、中小家族経営に改めて光を当て、多様な担い手の必要性に言及し、食料自給率に新概念を打ち出すなど、出来映えはなかなかのようだ。
ただし、基本計画は10年先を見通すマスタープランであり、実際にこのプランに基づき食料・農業・農村の各分野で、各論となる諸施策があって初めて農業者に役立つ農政運営が可能となるのだ。従って、今後、予算面、法制面でどんな政策が打ち出されるのか注視する必要がある。
というのも、「産業政策と地域政策の車の両輪」論をうたい上げた前回基本計画も、その後の政策展開では問題が多かったからである。環太平洋連携協定(TPP)、日・欧州連合(EU)経済連携協定(EPA)、日米貿易協定など、従来にない厳しい国際交渉結果の受け入れを迫られている。
そんな状況下で、上から目線の農業競争力強化支援法、関係者との軋轢(あつれき)の中、強行された卸売市場法改正、現在なお議論が絶えない主要農作物種子法廃止など、奇妙な法整備が続いた。
規制改革会議主導で行われた加工原料乳生産者補給金等暫定措置法廃止に至っては、新制度2年目にして早くもその根幹に関わる欠陥が見えてきた。これらの偏った政策により、農業・農村現場には基本計画から大きく乖離(かいり)した「農政改革」への不信感が募った苦い経験がある。
幸い、新基本計画では、地域政策の専門家などの問題提起や現実に農村崩壊の危機に直面する全国町村会の提言などもあり、一方的な産業政策主導にならずに済んだ。
昨年末の「農業生産基盤強化プログラム」において、既に基本計画を先取りするように、基盤強化のための増頭対策や畜産、園芸など施設集約型中小家族経営の承継対策、棚田を含む中山間地域の活性化対策など、従来の産業政策にはない新たな施策や、現場で使い勝手が悪いと評判だった規模拡大・法人化要件の緩和の動きも見られた。この方向性は新年度予算にも受け継がれている。
時あたかも、新型コロナによって行き過ぎた海外依存の危険性が顕在化している。新基本計画の下では、偏った理念や行き過ぎた資本の論理ではなく、農業・農村の実態に即し、地に足の着いた柔軟な政策対応が求められる。これが、10年後の生産努力目標の達成に向けて農業者の努力を促すことにもつながる。羊頭狗肉(くにく)となることのないよう、今後の政策展開を注視したい。
あらかわ・たかし 1982年農水省入省、食糧部長、畜産部長、総括審議官、大臣官房長、農村振興局長を歴任し2018年退官。この間、牛海綿状脳症(BSE)、事故米、戸別所得補償、農協改革、生乳改革などの課題に関わる。現在、損保会社と出身地(宮城県角田市)の農業振興公社の顧問、JA全農の経営管理委員を務める。
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April 07, 2020 at 05:01AM
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新たな基本計画 閣議決定 柔軟な政策対応 肝要 元農水省官房長 荒川隆氏 - 日本農業新聞
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