8月から中国各地で始まった計画停電は、徐々に範囲が広がっている。石炭価格の高騰影響はあるものの、電力不足が起きているわけではない。今回の計画停電は、あくまで中国政府による脱炭素推進策の1つだ。
(出所:123RF)
「計画停電は中国的な需給調整だ。中国で電力不足は起きておらず、電力危機でもない」。こう語るのは、中国のエネルギー事情に詳しい日本総合研究所フェローの井熊均氏だ。
今、世界のエネルギー価格が高騰している。原油価格は7年ぶりに高値を付け、天然ガスも同じく7年ぶりの高値となった。天然ガス価格の高騰から欧州ではエネルギー危機が発生。中国の爆買いはLNG(液化天然ガス)スポット市場の高騰に拍車をかけている。そもそも新型コロナからの経済回復でエネルギー需要は世界的に上昇しており、天然ガスだけでなく石炭の需給も厳しさを増している。
そんな中、起きた中国の計画停電だからこそ、石炭供給の不足や石炭価格の上昇が原因であるとの言及は少なくない。だが、ある大手エネルギー会社幹部も「中国で石炭不足は起きていない。中国は石炭産出国であり、国内に炭鉱が多数ある。石炭は確保できる状況にある」と断じる。
では、なぜ計画停電がこれほどまでに広範囲に行われているのか。理由は、中国政府の「第14次五カ年計画」にある。
地方政府にとって第14次五カ年計画の省エネ目標は必達
中国政府は「第14次五カ年計画」で2021年から2025年の5年間で13.5%の省エネ目標を掲げている。毎年3%削減することとなっており、政府は地方政府に省エネ目標を振り分けている。毎年12月に評価を行い、翌年に結果を公表する。
上期は南部を中心に気温が高く電力需要が大きくなったことに加えて、新型コロナからの経済回復で工場の稼働率が高まり、思うように省エネが進まなかった。
そんな中、国家発展改革委員会は8月12日、地域ごとに省エネ目標の達成状況を一覧にした「2021年上半期各地区エネルギー消費双控目標完成状況晴雨表」を公表した。目標未達の地方政府にとってたまったものではない。地方政府にとって、政府に課された目標は必達だからだ。
目標達成の期限は12月。こうした背景の中、一気に目標を達成すべく地方政府は計画停電に踏み切った。
日綜(上海)信息系統有限公司北京諮詢分公司総経理の王婷氏によると、「計画停電は9月に入ると、浙江省や広西省、雲南省、東北地域、山東省など多数の省に広がった。ただ、10月8日時点で北京と上海ではまだ計画停電を実施していない」という。
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