Saturday, May 22, 2021

社説(5/23):食育推進基本計画/生産現場を見つめる機会に - 河北新報オンライン

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 生涯を通じて健康に暮らしていくには、バランスの取れた食生活が欠かせない。国の第4次食育推進基本計画(2021~25年度)がスタートしたのに合わせ、改めて食の在り方を考えたい。
 正しい食生活の知識普及を目指した食育基本法が施行されたのは2005年7月。不規則な食事や栄養の偏りが子どもの成長に悪影響を与えている状況を改善しようという狙いだった。以来、06年から5年ごとに基本計画が作成されている。
 今回の基本計画では、重点事項として持続可能な食を支えることやコロナ禍による「新たな日常」などに対応した食育の推進を掲げた。これらを国連の持続可能な開発目標(SDGs)の観点から総合的に推し進めるという。
 食料が、どこで、どのように作られ、どれだけの人の手を経て食卓に届いたかを教えることは、食育の大きな役割だ。農林水産省が昨年12月に実施した調査によると、産地や生産者を意識して食品を選ぶ人の割合は73・5%、環境に配慮した食品を選ぶ人は67・1%だった。基本計画では、これらを80%以上と75%以上に引き上げる数値目標も新たに掲げた。
 まだ食べられる食品が廃棄される食品ロスも解決しなければならない。日本は食料の約6割を海外に依存するにもかかわらず、17年には612万トンのロスがあったとされる。世界を見れば約7億人が飢餓に苦しみ、国内でも子どもの貧困が社会問題化している。一人一人が無駄をなくすことに心を配る必要がある。
 食育推進計画は各都道府県でも作成されている。食育月間の6月に「食育推進全国大会」の開催を予定する岩手県は、「食料供給県としての特性を生かした食育の推進」を柱に掲げた。
 岩手では、郷土料理に関する知識や技術を有する人たちを「食の匠(たくみ)」として認定し、伝統や風土に培われた食文化の伝承活動をしている。小中学校の農林漁業体験学習ではインストラクターを派遣し、児童生徒に生産現場への理解を深めてもらう取り組みに力を入れる。
 多くの食料は豊かな自然の中で育てられる。深刻さを増す気候変動の脅威にさらされながらも供給を続ける生産者に敬意を抱けるような消費者教育も重要だ。食と農、都会と田舎の関係性を見つめられる仕掛けをつくりたい。
 一つの食料を作るのに、どれだけの労力や時間、コストがかかっているのか教える機会があっていい。それは消費者が適正な対価を支払うことになり、持続可能な農林水産業にもつながっていく。
 コロナ禍による外出自粛に伴い、飲食業者や生産者が打撃を受けている。裾野が広い食という産業に関わる人をどう支えていくのか考えてもらうことも、食育においては欠かせない視点だろう。

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