Sunday, April 12, 2020

新型コロナ感染拡大 AIで予測、早期に抑え込み - 日本経済新聞

CBINSIGHTS

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、スタートアップが人工知能(AI)を使った感染対策に取り組んでいる。ここ数年、ジカウイルスなどの別の感染症対策でも成果を上げてきた。クラスター(感染者集団)の発見や早期の対策につながる可能性がある。

新型コロナが世界各地に広がるなか、スタートアップ企業や研究者は人工知能(AI)を使ってウイルスの感染経路をモデル化し、封じ込める戦略を練っている。もっとも、この戦術は新型コロナだけに使えるわけではない。ここ数年、ジカウイルスやデング熱、ニパウイルスといった感染症の予測や追跡にもAIが使われている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

自然言語処理(NLP)や機械学習、位置情報のモニタリングなどのテクノロジーにより、流行が発生する可能性が高い地域を突き止め、感染の拡大経路を予測することが可能になった。各国政府や公衆衛生機関はこうした情報を活用し、十分な情報を得た上で対処法を速やかに判断できる。

今回のリポートでは、感染症を速やかに発見して対処するためにAIがどう活用されているかについて取り上げる。例えば、ソーシャルメディアでの言及数から感染拡大を追跡したり、野生動物の移動パターンに基づいてリスクの高い地域を特定したりしている。

■フライトやソーシャルメディアなどのデータを使って感染マップ作製

カナダのトロントに拠点を置くブルードット(BlueDot)は自然言語処理と機械学習を活用して特定の場所でのメディアの言及などデータを解析することで、感染症が流行している地域を特定する。さらに、こうした地域からの航空機の出発便に関する情報を追跡し、感染拡大を予測する。

ブルードットは2016年、この手法によりジカウイルスの感染がブラジルから国境を越えて米フロリダ州に拡大することを、米国初の感染例が報告される前に正確に予測した。19年12月にも、新型コロナが(発生源である)中国の武漢市から東京やバンコク、ソウルなどの都市に拡大することを予想した。

出所:ブルードット

出所:ブルードット

米グーグルが出資する米メタバイオタ(MetaBiota)は同様のテクノロジーを使い、米国で新型コロナの感染が拡大することを一連のリポートで明らかにした。

同社は自然言語処理を使ってソーシャルメディアでの言及など非構造化データを徹底調査し、世界各地の感染の深刻さを解明する。この情報に、インフラや医療態勢、人の移動予定など様々なデータに基づいて各国のリスクを数値化したアルゴリズムを組み合わせ、感染症の影響を受ける可能性が高い地域とその影響を予測する。

メタバイオタは独ミュンヘン再保険などの保険会社から米国の各情報機関を調整するインテリジェンス・コミュニティーのベンチャー部門In-Q-Telといった政府機関に至るまで、様々なパートナーと提携している。

AIとリスクの数値化を活用して新型コロナの影響を地図に示している企業は他にもある。

例えば、米ジョージア州に拠点を置く医療AIスタートアップのジェイビオン(Jvion)は、収入や年齢、栄養のある食事をとることができるかなどの要因に基づいてコミュニティーのリスクを判定。それに応じて各地域が対策を策定できるようにする「コミュニティーでの新型コロナ脆弱性マップ(Covid Community Vulnerability Map)」を米マイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure(アジュール)」上で作製している。

ハーバード大学医学大学院の研究グループもAIを活用して新型コロナの発生状況マップを作製している。自然言語処理を使って新聞やソーシャルメディアの投稿、政府の声明から関連情報を見つけ出し、発生状況を示した「ヘルスマップ(HealthMap)」で感染拡大をモニタリングしている。

自然言語処理と機械学習を使って大量の科学文献から情報を探し出し、感染拡大のパターンや解決策を解明できる可能性もある。

米アレン人工知能研究所はこのほど、新型コロナに関連する3万本近くの論文をグーグル傘下のオープンデータセットプラットフォーム「カグル(Kaggle)」で公開した。さらに、米政府やマイクロソフトなどと共同で、AI研究者にこのデータセットからウイルス対策に役立つ重要な情報を見つけ出してもらうコンペを開催する。

科学コミュニティーは新型コロナの感染経路や、どんな人や地域がリスクにさらされているかといった疑問の解明を目指している。

■動物や虫の移動パターンを追跡

科学者らはAIを使って病気を媒介する動物の移動パターンを追跡し、流行の発生に先駆けて影響を受ける可能性が高い地域を特定している。

出所:ケアリー生態系研究所

出所:ケアリー生態系研究所

米NPOのケアリー生態系研究所は19年6月、ニパウイルスを媒介する可能性が最も高いコウモリの種類を機械学習を活用してどのように突き止めたかを説明する研究論文を発表した。ニパウイルス感染症は主に南アジアと東南アジアでみられる神経疾患で、人間に感染した場合の致死率は最大75%に上る。

ニパウイルスを媒介するコウモリの生息地に影響する可能性がある移動パターンや気候変動などの情報を分析することで、科学者や政府は壊滅的な打撃を及ぼす大流行からリスクが高い人を守る策を講じることができる。

AI企業の米AIME(Artificial Intelligence in Medical Epidemiology)は同様のテクノロジーを使ってデング熱の感染拡大を予測している。蚊が将来繁殖する場所を特定することで、各国政府が幼虫駆除や殺虫をより的確に実施できるようにする。

AIMEはさらに、気候や地理、人口統計のデータを活用したプラットフォーム「デング熱流行予測(Dengue Outbreak Prediction)」で流行を予測し、予防的措置がとれるようにしている。

AIMEは現在、ブラジル、フィリピン、マレーシアの各政府と共同でデング熱と戦っている。他の感染症にも同じ解決策を適用する計画だ。

■監視を強化

一部の国は感染症の流行を追跡する戦略の柱に、顔認証から位置情報のモニタリングに至る監視テクノロジーを据えている。

米政府は新型コロナの感染拡大を受け、公衆衛生政策を策定する際、スマートフォンの位置情報の活用について議論するために、米フェイスブックやグーグルなどテクノロジー大手に協力を求めている。各社が位置情報を使ったテクノロジーの活用でどんな役割を担うかはまだ定かではないが、ウイルスの感染拡大モデルの構築や人と人との距離をとる「ソーシャルディスタンシング」のモニタリングなどが考えられる。

位置情報の追跡をもっと具体的な目的で使用している国もある。イタリアはスマホの位置データを使い、市民が政府のロックダウン(都市封鎖)の指示を守っているかをチェックしている。

イスラエルはこれまではテロ対策にしか使えなかったデジタル監視システムで感染者の行動をモニタリングし、ウイルスにさらされた可能性が高い人にメールで隔離を指示している。

一方、歴史ある位置情報ソフト企業も製品に機械学習を搭載し、感染症の追跡機能を強化している。

例えば、地理情報システム(GIS)ソフトの販売を手がける米エスリはこのほど、AIスタートアップの米ジオスパーク・アナリティクス(Geospark Analytics)と提携。ジオスパークのAIを活用したリスク診断ツールに地図や分析プラットフォームを追加した。両社は世界の新型コロナ発生状況マップを作製し、AIを使って様々なニュースソースから情報を抽出し、出来事やテーマごとにまとめている。

スタートアップ各社もスマートカメラや生体認証技術を活用して新型コロナの感染拡大を特定し、抑制しようと取り組んでいる。

例えば、コンピュータービジョン(映像から様々な情報を得る技術)を手がける米アテナ・セキュリティー(Athena Security)は、武器の使用や職場での事故などを検知するスマートカメラを開発した。3月には、顔の中で最も温かい目の近くの「内眼角」の温度をカメラで感知する熱感知システムを発売する計画を明らかにした。

AIユニコーン(企業価値10億ドル以上の未公開企業)である中国の北京曠視科技(Megvii、メグビー/Face++)と香港のセンスタイム(SenseTime)も新型コロナの感染拡大を抑えるため、熱を感知する顔認証ソフトを販売している。このシステムは病院や政府機関、空港などで使われる。

出所:センスタイム

出所:センスタイム

■今後の見通し

各国政府はAIを使って感染症をモニタリングするようになっている。リスクの高いエリアに迅速かつ正確に介入することで、将来の集団感染(アウトブレイク)を事前に抑え込めるようになる可能性がある。

特定の病気について解明が進み、アルゴリズムが改善されるのに伴い、AIはパンデミックの段階に達するはるか前に感染症を見つけ出す重要な役割を果たすようになるだろう。

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