Sunday, November 21, 2021

馬毛島基地計画 「地元と信頼築けてない」「アセスの形骸化」 専門家、防衛省の工事入札公告を批判 | 鹿児島のニュース - 南日本新聞

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馬毛島

馬毛島

 西之表市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画を進める防衛省が、環境影響評価(アセス)手続き中に基地整備に使うコンクリートを作るプラント工事の入札を公告したことに、環境分野の専門家から厳しい指摘が寄せられている。島内でのプラント組み立て・設置はアセス後とはいえ、調査結果が示されていない段階での発注に「地元と信頼を築く姿勢が見えない」「アセスの形骸化だ」との声が上がった。

 環境アセスメント学会理事で千葉商科大学学長の原科幸彦氏によると、環境影響評価法の規定では、対象事業の着手はアセスの最終的な結果を記す「評価書」公表までは禁じられている。プラント建設は対象事業ではないため、工事自体は止められないが、「基地整備の実施ありきの事前行為は誠意ある態度とは言えない」とする。

 国際影響評価学会元会長で国際的なアセス事情にも詳しい原科氏は「事業者である防衛省には、地元の利害関係者と十分な情報交換を行い信頼を得て、合意を築く姿勢が見えない。やり方が先進国の標準に合わない」と強調。また基地計画が中止になった場合、プラント建設のための公費使用は無駄になることにも触れ「事業確定前に関連事業に公費を支出するのは許されるのか、別の観点からも疑問が生じる」とした。

 環境・公害問題の研究者らが集まる日本環境会議顧問で沖縄大学名誉教授の桜井国俊氏は「国防のためとはいえ、国民の税金を使う事業。フライングはあり得ない。馬毛島基地の整備を急ぐ防衛省の焦りを感じる」と話す。

 今回の入札公告について、地元の鹿児島県と西之表市はそれぞれ「了承しかねる」「承服できない」と同省に伝えている。

 桜井氏は「特に県知事には県下の環境を保全する責務がある。アセスがしっかり行われるよう管理監督し、求められる手続きをきちんと踏むよう主張すべきだ」とする。一方、「日本のアセスで事業が認可されなかった例はほぼなく、形式的に終わるのが実態。国は単なる手続きとなめているのでは。アセスの形骸化だ」と加えた。

 環境問題に取り組む法律家でつくる日本環境法律家連盟理事を務める弁護士の菅野庄一氏(東京)は「事業内容はアセス手続きを経なければ決定されない。今回の公告は、たとえアセス結果がどう出ても事業内容は変えないと表明したも同然で、法を軽視する態度を露骨に示したものだ」と批判する。

 馬毛島には市有地や民有地などが残され、全てが国の所有ではないとした上で、「防衛省という国の行政機関が自ら法律を軽視する姿勢は、日本の民主主義が劣化し続けている現実を象徴しているように見える」と論じた。

 公告によると、発注するのは生コンプラントとセメント備蓄サイロ、砕石プラントの製作・設置工事。費用総額は約170億円と見積もる。工期は「契約締結翌日から2023年7月末まで」とする。22年1月17日に開札予定。

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