Saturday, November 6, 2021

【衝撃事件の核心】浮かぶ殺意と計画性、脱出課題も 京王線刺傷1週間 - 産経ニュース

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京王線特急の乗客刺傷事件は7日で1週間。殺人未遂容疑で逮捕された服部恭太容疑者(24)の事件前の足取りが明らかになるとともに、刃物や大量のオイルを周到に準備するなど強い殺意と綿密な計画性が浮かぶ。「退職した6月ごろから大量殺人を考えていた」。警視庁調布署捜査本部は仕事の失敗が背景にあるとみて全容解明を急いでいる。一方、事件では特急が駅に緊急停車後、乗客が狭い窓に殺到するなど脱出方法の課題も露呈した。(松崎翼、王美慧)

「ジョーカー」にふんし、逃げ惑う乗客追う

「燃えている」「早く開けて」。ハロウィーン当日の10月31日午後8時ごろ、調布駅を出発した京王線特急内が騒然となった。米人気コミック「バットマン」シリーズの悪役「ジョーカー」にふんした服部容疑者が、刃渡り30センチのサバイバルナイフで男性(72)の右胸を刺した。服部容疑者は逃げ惑う乗客を追いかけるように車両を移動。火を放ち、男女16人が煙を吸うなどしてけがを負った。

犯行時はサバイバルナイフのほか、ペットボトルに移しかえた大量のライターオイルや、殺虫スプレーなどを所持。スプレーは刃物で殺害する際に相手の動きを止めるため、ライターオイルは人にかけて燃やすためだった。

電車内での大量殺人を思いついたのは、8月に起きた小田急線刺傷事件がきっかけだったという。調べに「最初は渋谷のハロウィーンを狙っていたが、小田急線の事件を知り、逃げ場がない電車の中の方が確実に殺せると思った」と供述。犯行直前、ハロウィーンでにぎわう渋谷をうろついていたが「様子を見たかっただけ」と説明している。

家族とライン…犯行うかがわせる素振りなし

服部容疑者は福岡市出身。3年ほど前から同市内のコールセンターで働いていたが、客からのクレームが原因で配置転換を命じられ、今年6月に退職した。「仕事や人間関係で失敗し、死にたかった。自分では死ねないので、2人以上殺して死刑になりたかった」。退職直後には、通販サイトでサバイバルナイフを購入していた。

7月下旬に「一人暮らしがしたい」と福岡を出た服部容疑者は、神戸や名古屋を転々とした後、9月末に上京し、八王子市内のビジネスホテルに滞在。都内でライターオイルやスプレーなどを買い集め、犯行に向けて周到に準備を進めていた。

一方で、上京後も家族とは頻繁に連絡を取り合っていた。10月下旬には、無料通信アプリ「ライン」で11月に控えた自身の誕生日について妹と何気ないメッセージを交わすなど、犯行をうかがわせるような素振りは一切見せなかったという。

「計画通り殺せなくて残念」。服部容疑者に反省の様子はないという。

非常用ドアコックの「盲点」も露呈

事件では、特急が駅に緊急停車後、多くの乗客が半分しか開かない窓に殺到し、ホームドアを乗り越えて逃げる映像がツイッターなどで拡散。電車内の凶行を防ぐすべがない中、一刻を争う不測の事態での脱出方法の課題も露呈した。

乗客が狭い窓からの脱出を強いられた要因は「非常用ドアコック」が操作されたことによるものだ。犯行で車内はパニック状態となり、乗客は非常用ドアコックを操作して、ドアを開いて逃げようと試みたとみられる。だが、操作されれば、電車はそれ以上、加速ができなくなる。

その結果、特急は、普段止まらない国領(こくりょう)駅で停車しようとしたが、本来よりも手前で停車。車両ドアとホームドアの位置がずれた。車掌は安全面などからドアを開けられず、非常用ドアコックが操作されているため、すぐに停車位置の修正も利かなくなり、多くの乗客が窓から避難する形となった。

■「脱出方法」の周知の必要性も

では、どうすれば、混乱が防げたのか。非常用ドアコックは緊急時に車両から外に出るため手動でドアを開ける装置だが、走行中は転落や対向電車との衝突といった二次被害につながる恐れがあるなど「使用は適切ではない」(京王電鉄担当者)という。

東海道新幹線などでは非常用ドアコックを施錠して簡単に扱えないようにしているとされ、元大手鉄道会社員で鉄道ジャーナリストの枝久保達也さんは「今回非常用ドアコックが操作されていなければ適切に停車できスムーズに脱出することも可能だった」と話す。

一方、事件では乗客の転落を防ぐホームドアが避難の「障壁」になるという課題も突きつけた。

ただ、京王電鉄や枝久保さんによると、ホームドアは国領駅でも線路側からも開閉できる非常開閉ボタンが付いているほか、位置がずれても、開閉部分とは別に戸袋部などに非常用脱出口を備えたホームドアもあり、すでに多くの駅で採用されているという。

しかし、非常用ドアコックに比べ、ホームドアの非常用脱出口や非常開閉ボタンの存在や操作を認識している乗客は少ないとみられる。枝久保さんは「(脱出口などは)機種によって構造も異なる。混乱を防ぐためにも操作方法などを標準化すべきだし、使用方法も日ごろから利用客に伝える努力も必要だ」と訴えている。

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