地球温暖化の影響を強く受ける北極。厚い氷に覆われた観測データ空白域の謎を解き明かそうと、国内初となる北極域研究船の建造計画が動き出した。ハイテク観測装置の塊となる研究船には気候変動の予測精度の向上に加え、産業界には「21世紀のスエズ運河」とされる北極海航路を切り開く水先人としての役割を期待する声もある。
北極海の氷が溶けてなくなる――。早ければ約2040年にも北極海の氷が夏場にゼロとなる、との予測もある。近年、水温上昇による海氷面積の減少が加速し、北極は他地域を2~3倍上回るペースで温暖化が進んでいる可能性も指摘される。
北極海の氷は急速に減少している(写真:AP/アフロ)
「海氷減少とはいわば海の『蓋』がなくなることで、誰も知らない科学的な現象が進行しているのかもしれない」。北極域研究船を発注・運用する海洋研究開発機構(JAMSTEC)の担当者はこんな危機感を漏らす。北極海の異変は、日本近辺での台風や豪雨、豪雪、寒波など中緯度域の気象にも広く影響をもたらしている可能性があるという。
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