
メタバース
マーク・ザッカーバーグは別のアウグストゥス(Augustus)、つまり、世界征服を成し遂げた皇帝アウグストゥス・カエサルに心酔している※1。だが、皇帝を目指す少年ザックにはひとつの問題があり、それは彼と、さらなる巨万の富と権力との間に立ちはだかっている。 フェイスブックの取締役会のことではない。それはデュアルクラス株式(議決権に差のある2種類の株式を発行する仕組み)によって無力化した。 米政府のことでもない。900名のスタッフを擁する広報部とロビー活動費の大幅増の組み合わせで、厄介者は排除済みだ。 最後に残った障害は、世界そのもの。それが人々の気を散らせているのだ。 そこでザックは、我々に残された関心を吸い上げるために、一連の仮想世界を構想している。その世界で活動アルゴリズムを決定する者は“神”となり、ターゲット広告を山のように提供できるようになるからだ。
バーチャル・ファンタジー
2014年、フェイスブックはOculus VRを23億ドルで買収した。Oculusは米クラウドファンディング大手のキックスターターで資金を調達したベンチャー企業で、主に没入型ビデオゲーマーをターゲットにしたヘッドマウント型バーチャルリアリティ・ディスプレイを開発中だった。 この買収は物議を醸したが、共同創業者の天才少年パーマー・ラッキーは、オンライン掲示板Redditで擁護の発言※2をした。「Oculus Riftを使いたいとき、いちいちフェイスブックのアカウントにログインしなければならないようにはならないことを補償します」 2020年8月、ラッキーとその共同創業者が去ったあと、フェイスブックは「今後Oculusのヘッドセットを使用するにはフェイスブックにログインする必要があります」と発表した※3。ラッキーは、「当時、僕より現実世界での経験が豊富な人たちから買収に懐疑的な声が寄せられたが、彼らが言う通りの結果になった」と認めている※4。 VIVEやソニーの製品も含めると、VRヘッドセットは2021年に約600万台が売れると見込まれている。真の市場といえるものの、消費者受けのいいカテゴリーとは言い難い。事実、誇大広告で注目を集めたプロジェクトがいくつも宣伝倒れで終わっている。たとえば、10年間で30億ドルものベンチャーキャピタルを集め、構想段階の製品を次々発表をしてきた悪名高きMagic Leapもそのひとつだ。 Google Glassも2013年の発売後、わずか2年で生産停止となった※5。実装された僅かな機能はiPhoneにも可能で、それすらiPhoneに劣ることに人々が知れ渡ってしまったためだ。それでも、グーグルは諦めていない。『トロン』のような未来的デザイン※6から、お洒落メガネにデザインを変更している※7。 米誌「ワイヤード」のデヴィッド・ カルプスは、VRをテクノロジーが産んだ「リッチ・ホワイト・キッズ(裕福な白人の子ども)」と呼んだ。「キャリアが上向くような失敗を繰り返し、永遠に緩やかな分布曲線で評価され、常に結果ではなく『潜在能力』に基づいて判断される」と。 では、VRヘッドセットが大好きな人といえば? リッチ・ホワイト・キッドであるマーク・ザッカーバーグその人だ。 彼はインドネシアの大統領とバーチャル卓球をしたり※8、営業時間が終わってから会社のVRデモルームに忍び込んだりしている※9。しかし、ザックはゲーム用としてVRを推進しているわけではない。「僕のことは昔から知っているだろう」と、かつて彼は報道陣に語ったことがある※10。「遊びのために最適化はしない」 それを聞く限り、彼はラスベガスで一緒に散財する──人間の本性を知るのに打ってつけの行動だ──パートナーとしては、地球上で最悪の人物のようだ。 いや、話がそれてしまった。 私は自分の英国産SUVの助手席に座るのが嫌でたまらない。というのも、ハンドルを握っているのが誰であれ、確実に自分の方がうまく運転できるとわかっているから。まるで自分が実際に運転しているかのように、足を踏ん張ったり、力を抜いたりしてしまう。 この感覚を10億倍にすれば、ザッカーバーグの気持ちが少しは理解できるようになるかもしれない。10代の若者を憂鬱にさせ、選挙に悪影響を与え、我々の議論を下劣なものにしておいて、電動サーフボードのefoilに乗ってアメリカ国旗を振ってみようと思いついた男のことが。 聞いたところによると、サーフボートから「君たちの進歩を誇りに思う──しかし、もっと向上しなくては!」と叫んでいたらしい。 ちなみに最後の文章は、この記事とほとんど何の関係もないが、書いたら気分が良くなった。
からの記事と詳細 ( ザッカーバーグのメタバース支配計画はうまくいくわけがない! 『GAFA』著者のギャロウェイ教授がぶった斬る理由(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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