中国は5日開幕する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、2030年までに米国を抜いて 世界一の経済大国に躍り出ることも視野に入れた計画を提示する。
新5カ年計画の初年度である今年は、国内市場の後押しやテクノロジーの海外依存低減に向けた青写真を示すことになるため、全人代の重要度は特に高い。一連の政策が承認されるのは既に確実とはいえ、中国の計画を世界に示す手段として全人代はなお重要な仕組みだ。
中国は昨年、新型コロナウイルス感染拡大を早期に抑え込んでパンデミック(世界的大流行)から脱し、経済も プラス成長を確保した。今では資産バブルのリスクが広がっており、中国当局はコロナ禍からの景気回復を促してきた金融・財政面の刺激策の出口戦略を探る必要がある。ただ、成長を不安定化させず、企業のデフォルト(債務不履行)を既に警戒する投資家の動揺を招かずに実行しなければならない。
李克強首相が5日に示す計画の主な注目点は以下の通り。
GDP成長率目標
中国政府は昨年、国内総生産(GDP)成長率目標の設定を見送った。コロナ流行のリスクはなお残っており、今年も見送りが濃厚。共産党は質の高い成長を実現する必要性を強調しており、2年連続で数値目標を設けなければ成長ペースよりも質を重視していることをあらためて示すことになると、JPモルガン・チェースの中国担当チーフエコノミスト、朱海斌氏は指摘する。
だが、有力な中国政府系シンクタンクの研究員は質の高い経済成長を確保するためにも目標設定が必要だとの主張を先週展開しており、目標見送りが確実というわけではない。
中国GDP成長目標、今年は設定「必要」-政府系シンクタンク研究員
新5カ年計画では21-25年の平均成長率目標も示される見通しで、朱氏は平均5.5%前後の成長率になると予想する。前回の5カ年計画では6.5%以上に設定されていた。
刺激策の縮小
「積極的な」財政政策に伴い中国の財政収支は毎年赤字となっている。ナットウエスト・マーケッツの中国担当チーフエコノミスト、劉培乾氏(シンガポール在勤)は、今年の財政赤字目標は対GDP比3%とコロナ前の水準に戻ると見込んでいる。昨年は同3.6%以上だった。劉氏は「刺激策の引き揚げは緩やかで、過剰な債務の伸び抑制に軸足が置かれるとわれわれは予想している」と話す。
5カ年計画とテクノロジー重視
中国は政府活動報告と共に、21-25年の経済目標も公表する見通し。計画経済の名残である5カ年計画は大まかな展望の列挙が中心となるが、政策の基調を定めるものであり、数値目標も一部盛り込まれる。今回の5カ年計画は新テクノロジーの開発や半導体など部品の米国などへの依存低減に向けた取り組みが軸となる見通し。
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少子化問題と定年延長
新5カ年計画では急速な少子化と高齢化による経済成長への影響を和らげる取り組みも盛り込まれる見込み。一段の産児制限緩和や 定年延長を進める可能性がある。
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エネルギー目標
30年までに温室効果ガスの排出量がピークを迎え、60年までにカーボンニュートラルを実現するとの中国の目標を巡る具体策が注目材料。
金融改革
新5カ年計画には金融のさらなる対外開放や国内投資家による対外投資の制限緩和に向けた目標が含まれる見通し。資本市場改革も企業の直接金融を後押しする可能性がある。
一方、金融サービスで台頭する アント・グループやテンセント・ホールディングス( 騰訊)の「ウィーチャットペイ(微信支付)」などへの締め付けは強まっている。中国人民銀行(中央銀行)は今年に入り電子決済市場での独占禁止規則案を示した。
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香港
香港に関する発表は米国との対立に拍車を掛ける可能性がある。昨年の全人代では香港国家安全法の制定方針が 採択され、米国はその後、中国高官に対する制裁を発動した。中国当局は「愛国者」による香港統治を確実するための選挙制度見直しを主張している。中国は予算案の一部として国防費の目標も示す。昨年の全人代で示された国防費は6.6%増と1991年以来の小さい伸びにとどまった。
原題: What to Watch as China Rolls Out Economic Plan to Overtake U.S.(抜粋)
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