米ニューヨーク(NY)で65歳のアジア系女性がヘイトクライム(憎悪犯罪)とみられる被害にあい、衝撃が広がっている。米国でアジア系市民へのヘイトクライムが問題となる中、女性が激しく蹴られる映像が拡散した。NY市警は容疑者の男について、情報提供を呼びかけている。
3月29日昼、NY市中心部のマンション前で事件は起きた。二つ隣は私立中学校で、道路を挟んで向かいには子ども向けの公園がある。複数の付近住民によると、治安が悪いわけではなく、アジア系も多く暮らすエリアという。
市警が公開した25秒の映像には、歩く女性の姿が映る。前方から来た男が突然、女性の胸付近を蹴り、女性が倒れ込むと、さらに3回、上から踏みつけるように蹴って去っていく。女性は重傷を負って病院に運ばれたが、容体は安定しているという。
マンション内には管理会社のスタッフら3人がいたが、女性を助けることはなく、開いていた入り口の扉を閉めた。管理会社はインスタグラムで「アジア系米国人コミュニティーに対するいかなる差別も非難する」とし、スタッフの停職処分を発表した。
市警によると、男は女性に向けて「反アジア系の発言」を浴びせ、市警のヘイトクライム班が捜査中という。NY州のクオモ知事は州警察のヘイトクライム班に対し、市警を支援するよう指示したと発表した。
現場のすぐ近くに住む中国系男性(27)は、「最近はただ街中を歩くだけで不安になる。パンデミックの前まで恐怖を感じたことはなかったが、私も含めてアジア系が大なり小なりの差別を受けることが明らかに増えた」と語った。
NYでは昨年3月に新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、アジア系へのヘイトクライムが急増。2019年は3件だったが、20年は28件に上った。
今年は3月25日時点で、暴行を伴う反アジア系ヘイトクライムをすでに12件確認。昨年同期は0件だった。市警は昨年8月、専門の捜査班を組織し、現在は覆面捜査官の投入も含めてさらに捜査班を強化している。(ニューヨーク=藤原学思)
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