Friday, March 5, 2021

教訓もとに原発避難計画、パズルのような移動が前提…[断面]<1> - 読売新聞

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 それはおそらく歴史的な渋滞だった。恐怖に駆られた人々が、思い思いに車で逃げようとしたのだ。理由は一つ。事故を深刻に想定した計画が存在しなかったからだ。この東京電力福島第一原発事故の大混乱を教訓に、国は、原発周辺地域の避難計画作りに乗り出した。いくつかの計画が完成したが、<事故を深刻に想定した計画>に仕上がったのだろうか。

 宮城県石巻市の漁師町・寄磯地区(88世帯240人)には、釈然としない思いを抱えている人がいる。

 昨年6月に国が了承した広域避難計画によれば、北西2キロにある東北電力女川原発で異常が確認された場合、放射性物質が放出されていなくても、事前配布の安定ヨウ素剤を服用し、50キロ以上離れた大崎市に車で避難する。ところが、県から、こんな推計も公表されている。避難完了は最悪の条件で5日以上かかる――。

 そもそも国はパズルのような理想的な移動を前提にする。寄磯地区など原発の半径5キロ圏・予防的防護措置準備区域(PAZ)の住民がまず避難し、外周の30キロ圏・緊急防護措置準備区域(UPZ)の住民は「屋内退避」、つまり建物内にとどまるという。

 しかし、炉心溶融などの危険が迫る中、住民が待機を続ける保証などない。UPZの住民全員が屋内退避せずに避難を始めた場合には、激しい渋滞で「避難に5日」という事態に陥るというわけだ。区長の渡辺洋悦さん(68)は「避難が何日も続くなんて。なんとかしてもらわないと」と話す。

 福島第一原発事故では、避難者の6割近くが自主判断だったという自治体もある。新型コロナ感染症対策の困難にも通じる行動のコントロール。制御できなかった場合を想定したきめ細かい計画が必要だろう。

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