
高齢者や障害のある人など、災害時に自力で避難することが難しい要支援者のため、自治体が事前に避難方法を決めておく「個別計画」。国が策定を求めているが、佐賀県内の対象者約5万7千人のうち、全員分の計画を作成した市町はなく、全体の策定率は3割弱にとどまっている。しかも市町によって、大きな差が出ていた。その実情を探った。
10年前に起きた東日本大震災では、死者の約6割が65歳以上の高齢者だった。また障害のある人の死亡率は、被災者全体の約2倍だった。
これらを受け、国は2013年に災害対策基本法を改正。全市区町村に、要支援者の名簿作成を義務づけた。
名簿には、氏名、住所、電話番号のほか、障害や要介護の種別・程度を記載。本人の同意があれば、事前に地域の民生委員らに提供できる。また災害時には、同意の有無に関わらず、支援関係者に提供される。
災害が起きたとき、誰が要支援者を支援し、どこに、どのように避難するかを決めておくのが「個別計画」だ。
県福祉課によると、昨年末現在の各市町の策定率は、最も高い江北町では8割近くに達している一方、最も低い小城市では1割未満となっている。
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県内で最も人口が多い佐賀市では、約1万2800人が名簿に登録されている。このうち自治会などへの提供に同意している人は3218人。障害や病気のことを知られたくない、という人もいるという。
個別計画の作成に至ったのは2669人で、2割にとどまる。書類に「避難支援員」の連絡先を記入する必要があり、担当者は「この欄がなかなか埋まらない」と話す。
要支援者の中には、「地域活動に参加していないため、見知った人が近所にいない」という人もいる。一方、支援の担い手側からは「責任を負うのが怖い」といった声があるという。
支援ができなくても法的責任は問われないが、報酬や謝礼もなく、要支援者には頼みにくさがあると担当者はみる。
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市町で策定率に大きな開きがあるのは、「個別計画に統一的な形式がないからではないか」という指摘もある。
策定率が最も高い江北町では、担当者によると、「誰がどう避難させるか」は決められていない。中には緊急連絡先が、本人の自宅だった例もあるという。
策定率が7割近い白石町も、避難支援員の欄には、地区の消防団の部長の名前を記載しているという。
一方、策定率が最も低い小城市の場合、個別計画を作る際には、必ず職員らが自宅を訪問。本人の状態や支援者の有無、家ではどの部屋で過ごすことが多いか、といった情報を聞き取り、計画に書き込んでいるとしている。
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