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トレンドの移り変わりが激しい飲食業界は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を一番受けていると言っても過言ではありません。。
また、それ以外にも飲食業界では、深刻な客離れや人手不足などの課題に直面しています。
一方で、出前館やUber Eatsなどのデリバリーサービスの展開が加速し、飲食店では無人レジの導入など、DXが進行しています。
この記事では、社会情勢が不透明な中、飲食業界が直面している課題を紹介し、現状を理解した上で、今後の展望や成功事例の解説もしていきます。
業界の課題
高離職率に伴う人手不足
飲食業界市場で最も注目を集めるテーマが「人手不足」です。デフレ時代に安価な労働力を活用して飛躍的に成長した飲食業界ですが、低価格路線を実行し、競合他社もそれに応じて価格を変動させ人件費が削られている現状があります。
処遇改善に必要な人材や賃金が十分に確保できていない中で、利便性追求による深夜営業・24時間営業が常態化した結果、深刻な人手不足に陥っています。
農林水産省による平成30年の調査によると、宿泊・飲食サービス業において、大学卒業者の就職後3年目までの離職率は「50.2%」と産業全体の平均値 32.2%と比べて約20%も高い結果となっています。主婦や高齢者など、新たな労働力として期待されましたが、根本的な原因である低賃金高負担の問題が改善されない限り、抜本的な解決は遠いでしょう。人手不足は今後しばらくは慢性的な労働力不足の状態が続くと予想されます。
参考:農林水産省:https://www.digital-transformation-real.com/hubfs/resources/pdf/04_haifu-11.pdf
原材料コストの高騰に伴う売上減少
人手不足と並んで深刻な課題が「コストの高騰」です。
一番影響するのは「食料の価格高騰」です。農林水産省の調査によると、食料全体の消費者物価指数は2012年の95から2020年には106.5まで上昇しました。価格高騰により飲食店が大変な痛手を受けています。
食料の高騰に伴い仕入れ価格が上昇していきます。そのため原価率も上がってしまい、最終利益が減少している飲食店も出てきています。
次に影響が大きいのは「輸送コスト」の問題です。まず日本の食料自給率は、長期的に低下傾向で推移しており、中国などからの輸入に頼っています。今までギリギリの状態で維持されてきた輸送サービスですが、流通関連各社はこぞって増加したコスト負担を運賃に転嫁し、輸送費の高騰が続いています。
輸送コストは全ての原材料価格を押し上げるため、飲食店側の努力だけでは到底吸収しきれません。
客足離れとコスト負担増大による経営効率の悪化のダブルパンチが飲食業界市場を襲っています。
コロナ禍に伴う外食回数の激減
株式会社プラネットの調査によると、新型コロナウイルスが拡大する前と比べ、「自宅での食事が増えた」と回答した人は46.0%で、「外食が減った」と回答した人は63.3%と、コロナをきっかけに外食の機会が減少していることがわかっています。
外食回数の激減により、外食企業の業績が悪化しています。休業や外出自粛で売り上げが減少し、2020年4~6月期は大手の7割が最終赤字となりました。
企業はクーポンや割引券の実施が行いましたが、在宅勤務の定着で回復が鈍く、効果があまりなかったです。特に大人数で利用するファミリーレストランが、ファストフードのハンバーガー屋さんに比べ低迷が続くなど、業態間での格差もでています。
ソース:日経新聞
業界の現状
飲食業界では、現在どのような変化がおきているのでしょうか。
キャッシュレス化
電子マネーやスマートフォンアプリのQRコードによる電子決済が、以前より身近になりました。「キャッシュレス」は、消費者の利便性だけでなく、事業者のレジ業務の効率化に繋がり、生産性を高めると期待されています。これにより、飲食業界キャッシュレス化がどんどん進んでいます。
飲食店経営者・運営者を対象に、導入して良かったと思うITツール・サービスとその導入状況についての調査結果によると、最も導入率・導入検討率が高いのは「キャッシュレス決済システム」でした。この結果は、政府主導で進められているキャッシュレス化の動きにより導入中店舗や導入検討中店舗が増加しているためと考えられます。
回答からは、会計がスムーズになった、お客様の流動性が上がった、また海外からのお客様からの問い合わせが多いため導入したなどの声がありました。店内に現金を置くことで発生する金銭管理面でのリスクを下げる意味でも、重要な役割を果たしています。
さらに、日本政策金融公庫による「2019年3月外食に関する消費者調査結果(飲食店でのキャッシュレス決済の意向・利用状況)」の調査では、消費者が飲食店でキャッシュレス決済を利用したいと考える人が約5割という結果が出ました。約半分の消費者の方が、キャッシュレス決済を利用したいと考えているのです。
このように、市場ニーズが高まっていく中で、これからもキャッシュレス化の拡大が期待できます。
デリバリー・ECとの両立
中国などの海外を見ると、デリバリーがすでに10年前から人々の生活に浸透し、日本でも、ここ数年の間に、「Uber Eats」や「出前館」などデリバリーとECが両立するサービスがどんどん市場に出ています。
MMD研究所の「2020年インターネットでのフードデリバリーサービスに関する調査」によると、2020年7月の時点でインターネットでのフードデリバリーサービスを利用したことある割合は5割近く、去年より大幅に上がりました。
フードデリバリーサービスを利用するシチュエーションを聞いたところ、(複数回答可)「料理をするのが面倒なとき」が55.8%と最も多く、次いで「その料理が食べたいとき」が40.0%、「外食したいが家を出るのが億劫なとき」が28.7%となりました。
在宅勤務が増えた背景の中で、元々会社の近くのレストランやコンビニで食べる人も、今デリバリーサービスを使って手軽に美味しい料理が手に届き、作る手間を省けます。
デリバリー機能を持たない飲食店でもデリバリーを行えるようになる「シェアリングデリバリー」サービスも展開を広げています。
その中で、で「出前館」は、LINEグループとのシナジー((相乗効果)により、国内月間利用者数8,300万人を超えるLINEのコミュニケーション基盤や、IDマーケティング、位置情報、AI技術の活用と出前館の加盟店営業力を活かしていくことが期待されています。
「出前館」はデリバリーだけでなく、テイクアウト、イートイン予約、モバイルオーダーなど、飲食店のサービスを網羅的にカバーする「総合フードマーケティングプラットフォーム」も目指しています。
このようにデリバリーサービスが飲食業界に大きな影響を与えて、人々のライフスタイルも変わってきています。出かけなくても、すぐ家で美味しい料理楽しめることは最高ですね。
テイクアウトの活発化
くるなび社飲食のティクアウトに関する調査レポートによると、いずれかの業態の飲食店からテイクアウトを行った人は合計61.5%と過半数を超える結果となりました。
調査期間:2020年5月12日(水)~5 月13日(木) 調査方法:WEBアンケート 回答者 :20~60代のぐるなび 会員2,992人 |
調査の中でも、「コロナが明けた後もテイクアウトサービスを続けてほしい」、「外食よりも安く美味しい料理が食べられることがとても魅力的で、今後はお店でのお食事とテイクアウトの両方で楽しんでいきたい」、「料理が苦手な主婦としてはテイクアウトやデリバリーがあって大変助かっている」といった声が挙げられています。
飲食業界では、今までなかったテイクアウトという選択肢が増え、自宅でのプチ贅沢を楽しむことができました。
業界の未来
DX化で顧客の食体験を変えていく
外食業界はコロナ禍で大きなダメージを受け、「Go To Eatキャンペーン」は緩和剤として期待されるものの、キャンペーンで来店した客が今後も2度、3度と足を運ばなければ、結局一過性に終わってしまいます。
そのため、顧客と店舗の関係性が構築されなければ生き残れない時代がきています。 現在では、顧客の期待に応えるように、デジタルを手段として、リアルとオンラインを繋げて、DX化による顧客の食体験を変えていくといったユーザー目線が必要となります。
成功事例の一つを挙げますと、「顧客満足度の向上」と「サービス品質改善」のための「牛丼テック」で成功した吉野家です。
牛丼テックは、吉野家の顧客満足度向上や、店舗運営の質を上げることをテーマに、幅広く共創パートナーを募集し、センシング技術やAI, IoT技術を活用し、アイデアを形にするオープンイノベーションプログラムです。
▼牛丼テックについて詳しくはこちら
食がもたらすものは栄養だけではありません。非日常を感じたい、食を通じてだれかと繋がりたい、そんな感情価値を上げるには実はデジタルというツールは得意です。本来作りたての料理の味、スタッフによる質の高い接客、特別な雰囲気とロケーションなどに価値が見出されてきたため、実店舗における食の体験は、デジタルによる代替ができないと認識されました。
しかし、ユーザーの体験という視点に立ったとき、アナログと同等、もしくはそれを超える価値がデジタルに提供できるのならば、デジタルはアナログを補完し得るのではないだろうか。アフターコロナの時代には、より顧客の体験に踏み込んだアプローチが必要となっていくに違いありません。
AI×ビッグデータ
集客、売上予測、人事の提案をより正確的に行われために、「AI×ビッグデータ」がこの鍵を握っています。
出店計画:ビッグデータからそのひとの嗜好性をAIが特定することは、ある程度可能です。今後は街頭や駅、店内などに設置されている防犯カメラなどの映像データも解析して、時間帯の人の変化を把握し、エリアの特徴がより正確に分かるようになるでしょう。
集客:AIとビッグデータを使えば、付近で飲食店を探している人や、探してないが飲食店を利用してもいい人のスマホなどに、最適なタイミングで、効果的にポップアップ広告を出せるようになります。
売上予測:店の来客数が多い時間帯、客層、人気のメニュー、かける単価といった情報がAIはビッグデータから抽出し、分析していきます。分析によって、店長が気付かなくても、19時以降ははファミリー層が増えそう、と予測して教えてくれます。
人事の提案:離職率が高い飲食業界の採用活動は、いわゆるHRテック(人事にテクノロジーを活用すること)が導入されると、中途採用の場合も過去の勤怠状況など評価の履歴とエントリーシートを紐づけられ、かなり精度が高いマッチングができます。そこから個人の成長スピードの予測も立てられます。
業務の効率化を図っていく
これから人手不足の背景の中で、業務の効率化が非常に重視されていきます。
リアルタイム注文:テーブルごとに設置されたQRコードを読み取ることで、顧客のスマートフォンから注文を可能にする。おなじテーブルに着席したグループ間では、注文内容がリアルタイムで共有されるため、オーダーが重複する心配もありません。
POSレジ:売上データや販売データをクラウド管理できるほか、商品の部門管理や担当者別で管理できる売上管理機能なども有しています。インターネットにつながっているレジなので、タブレットが1台あれば導入可能です。ブレインレジを導入することで手書き注文の必要がなくなり、結果レジのうち間違いが劇的に改善されます。
タブレットやQRコードを使った注文の拡大:テーブルにタブレット一台かQRコードを置くと、お客様様がそれを通じてすぐ注文ができます。QRコードを読み込むと、メニューが表示されます。誰でも分かるように簡単に設計され、ソースの選択や大盛りの指定なども行えます。
コネクテッドロボティクスの活用:コネクテッドロボティクスはたこ焼きを焼くロボットやソフトクリームを作るロボットなど、厨房で活躍するロボットです。これらロボットは厨房ではあるものの、完全な裏方ではなく、来店客から作業が見える、比較的ホールに近い場所で”見せながら”働くロボットという位置づけに進化していきます。
キャッシュレス決済:スタッフが会計でかかりきりになることがなくなり、業務がスムーズになります。
このように、ITツールを導入することで、業務が効率化され、社員の労働時間が減って人時売上の向上にも貢献できます。
「独自性」を発見していく
飲食業界ではブームに乗る気風が強く、食材やメニューが流行るとこぞって後追いが出てくるという姿が今までは見られました。しかし、SNSの広まりとともにブームの拡散・収束がこれまで以上にサイクルが早くなり、ブームの後追いをしていては波に乗れず、かえって損失が出てしまうようになっています。
今、安定した経営を成立させるには一過性のブームに頼らない独自性が求められる時代が来ています。「その店でしか食べられない」「よそとは一味違う」独自性の強いメニューは新規・リピーターを獲得し顧客を強く囲い込む効果をもたらします。
ここで成功ケースとして挙げられるのはスターバックスです。独自のコンセプト”Third Place”「家庭でもなく職場でもない第3の空間」、落ち着いたおしゃれな店舗の内装、常に季節ごとに新しいメニュー、ドリンクのカスタマイズ化など、このような戦略でスターバックス独自のブランド力を作り上げ、差別化戦略が成功しています。
また、同社は顧客体験にも力を入れており、2019年にモバイルオーダーサービス「Mobile Order & Pay(モバイルオーダー&ペイ)」を立ち上げました。顧客は専用アプリで事前に注文と決済を済ませておけば、指定した店舗で出来上がったドリンクを即座に受け取れます。サービス開始後、月間の利用者数は3倍に拡大した効果がありました。
SNSの発達により、情報があっという間に拡散する時代だからこそ、特定の場所でしか味わえないメニューやサービス体験で他社と差別化しないといけません。これからはチェーン店でも特定の地域や特定の店でしか提供されないメニューの開発や、DX化でお客様に一層寄り添ったサービスの提供など、独自性を追求した動きが強まることが予想されます。
事例紹介
中国の事例
世界的に飲食業界のDXの最先端を走るのは中国である。中国最大のECサイトを有する「アリババ」グループが運営するスーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」がその代表例でしょう。
盒馬鮮生では、商品につけられたバーコードを上述のアプリで読み取ることで、産地や含有する栄養素などの情報を照会できます。このアプリには買い物かごの機能が設置されているため、そのままオンラインでショッピングを完結することも可能です。注文した商品は最短30分で自宅まで配送されます。「実物を見て商品を購入したいが、荷物を持ち帰るのは難しい」そんなユーザーにぴったりのサービスとなっています。
こうしたオンラインショップとリアル店舗を融合させた小売ビジネスは、「OMO(Online Merges with Offline)」と呼ばれています。ユーザーがオフラインで買い物をして電子決済を使用すると、その消費データがオンラインシステムに収集されます。もちろんユーザーはWebサイト、アプリ、ミニプログラムなどでも買い物ができます。これをアリババ元会長のジャック・マー氏は「ニューリテール」と呼びます。
また、買い物客が欲しい商品を見つけたら、購入したい商品に添付されているQRコードをモバイル端末で読み取ります。すると、買い物客は商品の口コミなどの評価を確認することができます。このとき、オンライン企業側では、顧客が商品を手に取ったことやQRコードで読み取った行動だけでなく、顧客のあらゆる情報を蓄積できます。
▼中国他業界の事例はこちら
日本の事例
DXによって売上が4.8倍増となった三重県伊勢市の1912年創業した老舗飲食店「有限会社ゑびや」が飲食業界の先駆者と言えます。
店頭に定点カメラを据え、商店街の通行客数や来店客数を、画像解析カメラ・来客予測AIシステムなどを使って測定しています。これに天気予報などのさまざまなデータを掛け合わせることで、来客予測で「的中率95%超」という高い的中率を実現しました。
同社のDX化では、BIツール化やAIの活用だけでなく、テレビ会議システムによる店舗オペレーションの効率化、オンライン会議システムを活用した社内コミュニケーションの活性化、情報共有基盤のクラウドへの一本化、レジ、カード決済、オーダーシステムにおけるスマートデバイスの積極活用なども重要なポイントです。
また、ゑびやでは2018年にシステムを外販するための株式会社EBILAB(エビラボ)を設立して、ゑびやの現場で鍛え上げたシステムを「TOUCH POINT BI」と呼ばれる、飲食・小売店に特化したクラウド型の店舗分析サービスとして販売し始めました。飲食業界の様々な可能性を開拓しています。
まとめ
コロナ禍をきっかけに、飲食店経営の常識は逆転しました。消費者の外食離れ、人手不足などの課題に直面しつつ、新たな機会も現れてきています。顧客とのつながりは飲食店が生き残っていく上で不可欠な条件になっていくでしょう。そのためには、テクノロジーの活用が最短の道になります。
既存の飲食業界対する観念を捨て、ゼロベースでビジネスモデルを再構築すべき時代だと言えます。まずは一つのITツールを導入してみて、成功事例に真似しながら、自社の可能性を開拓していきましょう。
①大学で行動経済学を学んでいます
②趣味はカフェ巡り
③AIを活用して価値創出する未来をワクワク期待しています。AIに関わる事例収集、また新しいサービスに紐つけることを勉強していきたいです!
からの記事と詳細 ( 飲食業界のDX化は「独自性」が重要!成功事例や今後の展望を紹介 | AI専門ニュースメディア AINOW - AINOW編集部 )
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