Saturday, January 23, 2021

馬毛島計画「引き返せない選択、熟慮を」 前田哲男さん - 朝日新聞デジタル

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 24日告示の西之表市長選の争点として注目される馬毛島をめぐる問題。長年、在日米軍と自衛隊を研究してきた軍事評論家の前田哲男さん(82)=埼玉県ふじみ野市=は、この島へのFCLP(米空母艦載機の陸上離着陸訓練)移転だけでなく、関連の自衛隊基地整備に注目している。基地計画の背景や今後について聞いた。

 ――防衛省は昨夏、馬毛島で整備を予定する自衛隊の施設配置計画を公表した

 硫黄島(東京都)で行われてきたFCLPの移転先が求められる中、どう決着するかに関心を持ってきた。2011年に日米が移転先として合意した馬毛島では当初、硫黄島のように米軍が使う滑走路を整える程度の整備だったはずだが、ふたを開けてみると島全体を自衛隊基地にする計画になっていた。

 本当に驚いた。自衛隊の基地は、旧日本軍や米軍が使った基地や施設の「跡地」に造られてきた。何もなかった場所への整備は、実現すれば馬毛島が初のケースではないか。

 ――11年の段階で、馬毛島で「通常の訓練等に使用する新たな自衛隊施設」の整備を検討すると合意文書に記されてはいた

 これほどの規模の想定ではなかったはずだ。現計画は完全な後付けで、いつの間にかFCLPと「主客転倒」させたと感じている。

 ――防衛省による島の買収額は約160億円。現在のような計画になったのはなぜか

 冷戦後、対中国をにらんで南西諸島を国防の第一線にするという自衛隊の「戦略重心の南方移動」があり、それが安保協力において米国からも求められるようになったことが背景にある。その大きな流れの中で馬毛島の地政学的な利点が、南西諸島に構築しつつある防衛網とのつながりで評価されてきたのだろう。

 馬毛島の基地は「南西諸島防衛」という自衛隊の新たな役割のシンボルのようなもの。そのためには160億円での買収も、防衛省にとって高い買い物ではなかったということかもしれない。FCLPという「仮面」の内側で、自分たちのほしい物を獲得しようとしている、と映る。

 ――馬毛島の基地は、南西諸島防衛の中でどのような役割が想定されているか

 ほぼ丸ごと自衛隊の島ということで、使い勝手がいい。大きな部隊が配置できるほどの広さはないので、本土と奄美・沖縄の間の中継地点という役割だろう。米軍普天間飛行場のオスプレイが「エンジントラブル」ということで時々、奄美空港などに降りている。米軍機が馬毛島を緊急着陸地に使うことは起こりうるだろう。

 ――FCLPの他に、自衛隊機の離着陸などの訓練が年約130日行われるなどの計画も明らかにされた

 訓練基地としても大きな役割を担う。予定されている訓練は、水陸両用訓練や離着水訓練など、離島奪還の上陸をにらんだものが多い。防衛省は離島奪還のための「水陸機動団」を編成したが、訓練の場所が少ない。昨年の日米共同演習で臥蛇島(十島村)で行ったような、上陸、展開、占拠、戦闘に至る一連の訓練のシナリオが、馬毛島ではスムーズに展開できる。計画では水陸両用訓練が年に10日ほどとされているようだが、次第に増えていくのではないか。

 ――西之表市長選は、FCLP移転と自衛隊基地整備についての民意が問われる。市民が留意すべき点は

 軍隊は自己拡大していくものだ、ということを認識する必要がある。今示されている施設や訓練の計画は最小限と考えるべきだ。

 実際に部隊が入ってくれば、島の雰囲気や景観は一変する。基地や訓練の受け入れに伴う交付金などメリットがある一方、「引き返せない選択」として熟慮してほしい。(聞き手・奥村智司)

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