Sunday, September 12, 2021

原発計画が止まった町を歩く 新増設はタブーか - 日経ビジネスオンライン

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2011年の福島第一原子力発電所の事故後、原発の新増設やリプレースを巡る議論は封印された。各地で計画中の原発はストップし、再開はみえない。一方で、老朽原発を使い続けるより新増設したほうが、電力システム全体のコストを大幅に抑えられる試算もある。無策のままでは2050年のカーボンニュートラル達成も危うい。

 JR広島駅から電車とバス、タクシーを乗り継ぐこと3時間。原発計画がたなざらしになったその地は断崖絶壁の山道を抜けた海岸沿いにあった。

 記者が訪れたのは山口県の最南端に浮かぶ群島の町、上関町。地元の中国電力が島の1つに137万キロワットの原発2基を新設する計画で2009年、国に原子炉設置許可の申請を出した。だが、11年の福島事故後、安全審査は中断。地質調査など準備工事もこの10年止まったままだ。連れてきてくれたタクシー運転手がぼやいた。「3年前よりさらに荒れとうね。進む気配はみじんもない」。

波打ち際の原発新設予定地は静けさだけが漂う(山口県上関町)

「脱炭素を実現する町になるはずが」

 上関町を歩くと朽ちた家々が目立つ。人口はピークの1万2000人から2500人まで減った。高齢化率は県内で最も高い約57%に達する。農漁業が主要産業だが、税収は10年前に比べ18%減った。

 町の一角から山を見上げると、山には2基の風車が勢いよく回る。19年にできた町営の風力発電所で中国電への売電収入で税収減を補っている。国からの電源立地交付金も毎年8000万円入ってくるとあって町の実質単年度収支は黒字を維持している。だが、交付金の恩恵で建てられた温泉施設や道の駅はあまりにぎわっていない。

 着工すれば運転開始からの5年間まで総額170億円の収入が入るが、捕らぬタヌキの皮算用になりつつある。「全国の原発の再稼働もままならない中、新設できるのか。一喜一憂しても仕方がないと腹をくくっている」。原発による産業振興を見込んでいた柏原重海町長はお手上げ状態だ。

柏原町長は原発による産業振興を目指していたが…

 上関町まちづくり連絡協議会の古泉直紀事務局長は「大手ゼネコンも引き揚げた。脱炭素の時代に小さな町の原発が貢献できると思っていたのだが」と胸の内を明かす。「上関原発の開発は重要な経営課題と考えており、その必要性に変わりはない」。4月の記者会見で中国電力の清水希茂社長は現実を振り払うようにこう強調した。

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