
現行の国土形成計画が2025年に終了することを見据え、国土交通省は新計画の論議の場として国土審議会に計画部会を設置した。同審議会の「国土の長期展望」と「国土管理」の両専門委員会でのこれまでの論議を土台に、新計画を検討する見通しだ。
東京一極集中を是正するために国土の長期展望専門委は、デジタル技術などを活用して暮らし続けることが可能な地域づくりを目指し「地域生活圏」の形成を提起した。人口10万人程度の範囲で、医療や教育、買い物など住民の普段の行動が完結することを想定。行政手続きや医療分野のデジタル化、買い物や交流の場づくりなどを進める。
地域政策に詳しい明治大学の小田切徳美教授は、人口減少の実態やデジタル技術の活用などを考慮し「10万人の生活圏は適切な規模」とみている。その上で「生活機能をフルセットでそろえようとすると10万人を超えて広域化しかねない。かつての市町村合併と同じ結果を招く恐れがある。どのような機能を確保するか、生活圏単位での柔軟な吟味が必要だ」と指摘する。
「平成の大合併」で自治体は広域化した。その結果、中心部から離れた地域には行政の目が届きにくくなり、地域コミュニティーが衰退したことなどの弊害が生じたとされる。新計画では、「平成の大合併」の問題点を改めて検証し、令和時代の新たな地域の在り方を示すべきだ。
政府は、全ての国民が地域生活圏に住むと想定しているわけではない。国交省の試算では、関東や中部、関西などを除く圏域を「地方圏」とし、その人口の95%に相当する4196万人は同生活圏に含まれる。一方、都市部の中心から離れて暮らす229万人(5%)は同生活圏から外れる。
地域生活圏の形成では、中心部と、同生活圏から外れる地域や中心部から遠い地域との間で、所得や生活環境で格差が生じるのをどう防ぐかが課題になる。同専門委は、住民主導で買い物施設や地域内交通などを運営する「小さな拠点」を有望とみている。同拠点を創設し、定着させるには運営する住民の掘り起こしや財政支援が欠かせない。
「小さな拠点」の形成を含め、地域住民に最も近い行政機関である市町村が地域にどう関わり、それを国や都道府県がどう支えるか。それぞれの役割を明確にすることが新たな計画には求められる。
からの記事と詳細 ( 新国土計画の条件 格差防ぎ多様な地域を - 日本農業新聞 )
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