
新型コロナウイルスワクチンの接種で府内の市町村は、今春の開始当初から、二転三転する国の方針に
■「モデルナの幻想」
「65歳以上の接種が順調に、想定よりも早く進んでいる。64歳以下の接種も前倒しで進めていく」
6月16日、記者会見した京都市の門川大作市長は満足げに語った。高齢者の接種と予約を当初の予定から10日あまり前倒しして完了できる見込みが立ち、64歳以下でも接種を始める余裕も生まれていた。
当時、市は7月以降にファイザー製ワクチンの供給が大幅に減ることを知っていた。それでも楽観的だったのは、政府側がある計画を示していたからだ。
「ファイザー製が減る分は、モデルナ製で補う。京都市の集団接種もモデルナ製に切り替えてほしい」
5月下旬以降、門川市長や市の幹部は、ワクチン担当の河野行政・規制改革相とのオンライン会合でそう聞かされていたという。
実際、市はモデルナ製の活用に向けて
市医療衛生推進室(新型コロナワクチン接種事業担当)の吉田就一担当部長は「ワクチンは間違いなく届くという安心感があった」と明かす。
しかし、6月23日夜、河野氏はモデルナ製で始めたばかりの「職域接種」で、新規申請受け付けを一時休止すると発表。京都市への配分も、河野氏の発言通りにはならなかった。
結局、京都市でモデルナ製を使う集団接種会場は、高齢者以外が対象の「みやこめっせ」だけになり、他の会場新設は先送りを余儀なくされた。64歳以下の接種予約は停止、高齢者接種でも、423の医療機関で1万8000人の1回目接種が滞ることになった。
京都の医療関係者の間では今、こんなふうにささやかれている。「モデルナの幻想にだまされた」
■揺らぐ対面再開
大学での学生や教職員への接種(職域接種)でも、国の度重なる方針変更により、混乱が生じている。
府内では25の大学・短大が国に職域接種を申請。立命館大で9日までに約3万2000人、同志社大では約2万人が接種を受け、9月末までに完了する見込みが立っている。ところが、河野氏が新規申請の一時停止を発表して以降、25校中8校でワクチン供給の時期自体が不透明になっている。
7月21日の記者会見で河野氏は「8月中に(大学にも)供給が開始できる見込み」と説明。しかし、9日後の30日には、モデルナ製のワクチン製造過程のトラブルで「新しく供給を始める会場数が想定よりも若干少なくなる」と、一歩引いた発言に変化した。
龍谷大は7月上旬の開始を目指したが、厚生労働省から「予定時期の配分は困難」との連絡を受けた。一時、8月初・中旬の配分開始も見えたが、現時点では23日以降になる見込みだという。担当者は「供給の遅れで接種開始の日も確定できない」と困惑を隠さない。
萩生田文科相は7月13日の記者会見で、「後期授業が始まる9月末までに2回目の接種を終える」との目標を示していた。大学側には学生や教職員の間でワクチン接種が進むことで、後期(秋学期)の開講を円滑に進めたい思惑がある。
ただ、ワクチン供給が見通せない大学は、具体的な接種計画を立てられず、授業計画に反映させることは困難になっている。ある私立大の幹部は「学生には接種したうえで安心して秋学期を迎えてもらいたいが、すでに厳しい状況だ。社会の感染状況も踏まえて、対面授業への移行は慎重に判断したい」と話す。
医療政策に詳しい美馬達哉・立命館大先端総合学術研究科教授の話「新型コロナワクチンの接種事業では、厚生労働省や内閣府、大規模接種を担った防衛省が連携の悪い『縦割り主義』にとらわれて融通がきかず、柔軟な政策がとれていない。都道府県や市町村も、あらかじめ決められた枠組みでは実力を出せるが、余力がないので、想定外の事態に直面すると身動きができなくなる。時間が限られた中での作業量が膨大な事業では、国や地方自治体が十分に力を出し切れないという実情が、改めて浮き彫りになっている」
からの記事と詳細 ( <ワクチン接種計画 二転三転>自治体、大学 国に翻弄 - 読売新聞 )
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