Friday, August 20, 2021

<Newsスポット>小川のメガソーラー計画予定地 「盛り土」熱海土石流の10倍 - 東京新聞

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 小川町の丘陵地に計画されている県内最大の大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の土地造成計画で、七十二万立方メートルの盛り土が予定されていることが、同町で問題になっている。静岡県熱海市で七月に起きた土石流発生場所の十倍に当たる量で、盛り土の予定箇所の一つでは二〇一九年十月の台風19号で地滑りも発生しており、周辺住民は「命の危険がある。造成されてしまえば一生、心配をして暮らさなければならなくなる」と不安の声を上げている。(中里宏)

6月末に開かれた環境影響評価(アセスメント)の公聴会では、住民らから「盛り土」や環境悪化への懸念の声が相次いだ=いずれも小川町で

6月末に開かれた環境影響評価(アセスメント)の公聴会では、住民らから「盛り土」や環境悪化への懸念の声が相次いだ=いずれも小川町で

 このメガソーラーは「さいたま小川町メガソーラー」の事業名で、同町飯田、笠原など約八十六ヘクタールの敷地のうち、外縁部を除いた約四十三ヘクタールを造成するなどして、出力三万九千六百キロワットの太陽光発電所を約四年かけて建設する計画。敷地は一九九〇年代に開発が中止になった「プリムローズカントリー倶楽部(クラブ)」の跡地が中心。敷地面積は小川町全体の1・4%に当たり、中央部を官ノ倉山ハイキングコースが横断する自然豊かな丘陵地となっている。

 発電パネル設置のための土地造成では、斜面や谷の計九・六ヘクタールに七十二万立方メートルの盛り土がされる計画。これは今年七月に熱海市で起きた土石流災害で、静岡県が推定した発生場所の盛り土量約七万四千立方メートルの約十倍。V字形の予定地内の東西二カ所に大半の盛り土が集中する。予定地周辺には土石流危険渓流に指定された渓流があり、土砂災害警戒区域や同特別警戒区域に指定された集落もある。

■県が安全性審査

 東側の盛り土予定地では二〇一九年の台風19号による大雨の後、幅約四十メートル、長さ約五十メートルの地滑りが発生している。予定地近くに住む土木工学技術者(地質、ダム設計)の男性(63)は「地滑り跡を見ると、粘土質の地層の上の土が崩れたのは一目瞭然。粘土質の土の上に盛り土をすると、底部が滑り面となる『底面破壊型』と呼ばれる地滑りが起きる可能性がある」と危惧している。

 計画は経済産業省への事業認定申請を経て現在、国の環境影響評価(アセスメント)の手続きに入っている。今後、工事を始めるためには、ゴルフ場開発の用途で取得され、現在の事業者に承継された県の林地開発許可を、メガソーラーに用途変更する新たな許可申請が必要となる。県森づくり課の担当者は「盛り土の形状や排水対策など、安全性も審査の対象になる」と話している。事業者から変更申請は出されていないという。

■振動や騒音懸念

 環境影響評価で事業者が公表した説明資料によると、予定地で行う盛り土七十二万立方メートルのうち、約半分の三十六万五千立方メートルは敷地内の斜面を削って出た「切り土」。残り半分の三十五万五千立方メートルは外部から運び込む残土になっている。これに対し、周辺住民は「三年にわたり大型ダンプだけで一日約百二十台(往復二百四十台)も狭い道を通行する。ダンプが予定地に入る道路前には特別養護老人ホームもあり、振動や騒音、粉じんに悩まされるのではないか」と懸念している。

 こうした周辺住民の声を受けて小川町議会は昨年十二月、外部から残土を受け入れる計画に対し「土砂搬入に強く反対する意見書」を知事に提出している。

■搬入土砂に危惧

 また、放射性物質など汚染物質が混じった土砂が持ち込まれることを危惧する声も上がっている。小川町は有機農業が盛んで「有機の里」とも呼ばれている。町の有機農家五十軒以上は今年五月、「汚染されているかもしれない土が持ち込まれ、災害で河川や農地に流入すれば、有機農業をうたえない事態になりかねない」との反対決議書を知事宛てに提出している。

 メガソーラー事業者「小川エナジー合同会社」代表者の男性は本紙の質問に対し、「取材には応じていない」と答えた。

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