Wednesday, August 4, 2021

社説(8/4):地球温暖化対策計画/実効性欠く「省エネ」頼り - 河北新報オンライン

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 自ら高い目標を設定して野心的な政治決断を演出してみせた割には、具体策は乏しく、実現の見通しも定かではない。最大の問題は苦し紛れの「数字合わせ」のため、負担の多くを家庭の省エネ努力に求めている点だ。このままでは、菅義偉政権の本気度さえ疑われかねない。
 政府が温室効果ガスの排出削減に取り組む新たな「地球温暖化対策計画」の原案を公表した。
 現行計画は2030年度に13年度比26%削減を掲げていたが、菅首相が4月に打ち出した「46%削減」を達成するため、20%分を上積みして5年ぶりに改定される。
 計画案は産業、運輸、家庭など五つの部門で削減に有効な取り組みの例を列挙し、部門ごとに目標となる削減率などを示した。
 削減率が最も大きいのは家庭部門で、現行計画の39%から66%に大幅に引き上げられた。その一方で、産業部門は37%減(現行計画7%)、運輸部門は38%減(同28%)とした。
 しかし、二酸化炭素(CO2)排出量(19年度)は、産業部門が3億8400万トンで全体の35%を占めるのに対し、家庭部門は1億5900万トンで14%にすぎない。
 公平性を考えれば、国民の理解を得るのは難しいのではないか。
 取り組み例でも、家庭部門については家庭用燃料電池(エネファーム)のさらなる導入や太陽光発電設備の拡大などが示されたが、産業部門については経団連などが中心となり既に削減を進めているとして「自主的取り組みを進める」という。
 これでは、経済界との摩擦を回避し、家庭部門につけを回していると受け止められても仕方あるまい。
 さらに、計画案は「国民一人一人の理解と行動変容」を強調。「自らの問題と捉え、ライフスタイルを不断に見直す」ことを通じ、省エネや食品ロスの抑制などへの協力を期待している。こうした呼び掛けは、既に限界が明らかな政府の新型コロナウイルス対策と共通する手法だ。
 フランス政府は、抽選で選ばれた150人による「気候市民会議」に温室効果ガス削減対策案の作成を託し、25年以降の飛行場の新設禁止、国内航空路線の廃止、温暖化対策目的の富裕税創設-など約150の政策提案を受けた。
 欧州では気候変動問題を機に、こうした「市民会議」が広がっている。フランスの例では抽選に当たり、性別、年代、学歴、居住地が実際の国民の構成に近くなるように調整されたという。
 国民の協力が必要ならば、まずは「自らの問題」と捉えられるように、政策決定への国民参加が不可欠だ。漠然とした呼び掛けではなく、国民的な議論を喚起し、実効性のある制度を作ることこそ、政権本来の責任であるはずだ。

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