保釈中だった日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(66)のレバノン逃亡を手助けしたとして米国で拘束された米国人2人について、日本と米国の両当局が、犯罪人引き渡し条約に基づいて近く日本に身柄を引き渡すことで合意した。関係者への取材で判明した。東京地検は犯人隠避と入管法違反ほう助の両容疑で2人の逮捕状を取っており、逮捕、収容に向けて米国との間で最終調整を進めているとみられる。
2人は、米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」元隊員のマイケル・テイラー(60)と、息子のピーター・テイラー(27)の両容疑者。逮捕状の容疑は、ゴーン前会長が保釈条件で海外渡航を禁止されていることを知りながら、2019年12月29日午後1~11時ごろ、ゴーン前会長を東京都から関西国際空港に移動させ、荷物に隠して保安検査場を通過させて逃亡の手助けをしたとしている。
ゴーン前会長は有価証券報告書に役員報酬を過少に記載したとして18年11月に金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された。その後、金商法違反に加え、日産の資金を私的に流用したとする会社法違反(特別背任)でも起訴された。いったん保釈された後に再逮捕され、19年4月に再保釈された後は自身の公判へ向けた準備を進めているとされていた。だが、19年12月31日、「私はいま、レバノンにいる」との声明を出し、海外に逃亡したことが発覚した。
地検が警視庁の協力を得て足取りを捜査した結果、ゴーン前会長は2日前の29日午後2時半ごろ自宅を出て、六本木の高級ホテルに向かい、マイケル容疑者らと合流。品川駅から新幹線に乗り新大阪駅で降りて、午後8時ごろ、関西国際空港に近いホテルに入って大きな箱に身を隠したとみられている。箱はプライベートジェットに積み込まれており、マイケル容疑者らとともに出国した疑いがある。ゴーン前会長はトルコを経由してレバノンに逃亡したとみられている。
東京地検によると、ピーター容疑者は逃亡の半年ほど前から、弁護人の事務所などで複数回、ゴーン前会長と面会していたとされる。マイケル容疑者は、紛争地域での警護や危機管理のコンサルティングを請け負う専門家で、逃亡の打ち合わせをしていた可能性がある。ただ、保釈に当たって携帯電話やパソコンの使用を制限されていたゴーン前会長が、どのように2人に接近したのか、詳細は分かっていない。
地検は20年1月30日、マイケル容疑者らの逮捕状を取った。米司法当局の文書によると、マイケル容疑者とピーター容疑者は2~3月、マサチューセッツ州ボストンに帰国。レバノンに向かう飛行機を予約していることが判明し、米当局が5月、2人を拘束した。東京地検は犯罪人引き渡し条約に基づいて2人の引き渡しを請求。同州の連邦裁判所は9月、2人の身柄の引き渡しは可能という司法判断を示していた。【志村一也、二村祐士朗、国本愛】
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