電力供給などについて政府の方針を示すエネルギー基本計画の改定に向けた調整が難航している。 菅義偉首相が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、今回は具体策を盛り込む重要な改定となる。しかし、再生可能エネルギーの普及をめぐり政府内で綱引きが繰り広げられ、先送り論も浮上している。 現行の計画では、30年度の電源構成を火力56%(うち石炭26%)、再エネ22~24%、原発20~22%とすることを目指す。だが、首相が今年4月、30年度の温室効果ガス削減目標を従来の13年度比26%減から46%減に引き上げ、改定では火力のさらなる削減が必要となった。 最近では火力を4割程度に引き下げ、再エネは4割弱に上げる方向で調整が進む。環境省では再エネのさらなる上積みを視野に入れた目標設定を求める声がある。一方、経済産業省は「太陽光パネルを設置できる土地に限界があり、4割弱でも達成は厳しい」(幹部)と難色を示す。 また、6月11~13日に開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、日本が力を入れてきた石炭火力発電設備の輸出に関し、温室ガスの排出削減対策が講じられていない新規案件の公的支援は年内に終了することで合意。政府が例外として輸出を支援してきた高効率設備について、見直しに追い込まれた。 法定の運転期間を過ぎた施設の廃止が予想される原発に関しては、自民党内や産業界の中から新増設や建て替えを進める方針の明記を求める声が出ているが、公明党は否定的だ。政府も東京電力福島第1原発事故で高まった不安が解消されていないと慎重な姿勢で、明記しない方向で検討が進んでいる。 調整の難航で、当初目指したG7サミットまでの改定の大枠提示はできなかった。秋までに行われる衆院選の後に改定を先送りするとの観測もある。ただ、11月までに開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の前には改定が必要。先延ばしは国際社会へ環境対策に後ろ向きとの印象を与えかねず、小泉進次郎環境相は「(COP26の)ぎりぎりに滑り込むようなことは許されない」と強調している。
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