英国政府は7月20日、ガス・電力市場局(Ofgem)と共同で「2021年版スマートシステムと柔軟性(注)の計画」を発表した。この計画は、温室効果ガス排出のネットゼロ・エネルギーシステムを可能とする、柔軟性のある電力供給のスマートシステムのビジョンと分析、政策を示したもので、2017年版の更新となる。政府は2020年12月の「エネルギー白書」(2020年12月18日記事参照)の中で、この計画と「エネルギーデジタル化戦略」(2021年7月27日記事参照)を2021年春に公表するとしていた。
今回の計画では、主要テーマとして、(1)需要側の柔軟性の促進、(2)送配電系統の柔軟性に対する障壁の除去:電力貯蔵と国際連系、(3)柔軟性に対応した市場改革、(4)エネルギーシステムのデジタル化の4つを設定。それぞれ、2020年代半ばまでの達成目標と、2030年までまたはそれ以降に必要になろうと想定する内容をまとめている(添付資料表参照)。
政府は、スマートシステムと柔軟性の可能性を最大限に引き出すことで、2050年までにピーク需要のための発電量やネットワークを削減でき、年間最大100億ポンド(約1兆5,200億円、1ポンド=約152円)のコストを削減し、最大1万人の雇用を創出することができるとしている。また、事業者や一般消費者に対しては、余剰電力の売電による電気料金の抑制や、家電製品の稼働コストが最も低くなる時間帯を知ることができるといった利点を挙げている。
政府とOfgemはこの計画で、再生可能エネルギーによって発電した電力を大規模かつ長期間貯蔵可能な新システムの開発を後押しし、エネルギーシステムの脱炭素化につなげる。このような技術には、揚水発電や圧縮空気によるエネルギー貯蔵、電力を水素に変換して発電に利用することなどがある。また、電力の需給調整に国際連系線を活用し、最小コストで脱炭素化を実現する方法も検討している。
Ofgemのジョナサン・ブレアリー最高経営責任者はこの計画について、7月20日付プレスリリースで「英国が掲げる気候変動のネットゼロ目標を達成しつつ、安価なエネルギー料金を維持するために不可欠」とした上で、「いつどのように電気を使うかを変革し、何百万台もの電気自動車(EV)やスマート家電、その他の新しい環境技術がエネルギーシステムにデジタル接続することを可能にする」と述べ、計画の意義を強調している。
(注)再生可能エネルギー大量導入時に電力需給の瞬時の変動に応じて、電力供給や消費を調整する能力
(宮口祐貴)
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